空中早期警戒管制機(読み)くうちゅうそうきけいかいかんせいき(英語表記)airborne warning and control system

日本大百科全書(ニッポニカ) 「空中早期警戒管制機」の意味・わかりやすい解説

空中早期警戒管制機
くうちゅうそうきけいかいかんせいき
airborne warning and control system

略称AWACS(エーワックス)。早期警戒機のうち指揮能力の大きいもの。「空飛ぶ作戦司令部」といわれるように、接近してくる国籍不明機を数百キロメートル遠方探知識別し、そのなかからどの目標がもっとも脅威があるかを判断して、味方の戦闘機に迎撃を指示する軍用機で、胴体上部に円盤状のレーダーを搭載しているのが一般的特徴であるが、近年では棒状アンテナを搭載したバランスビーム型、また機体表面にアンテナを密着させたコンフォーマル型などがある。このほか空中給油支援、捜索救難、通信中継などの任務も行う。AWACSは、地上のレーダーが水平線の向こう側を飛行する航空機を探知できない欠点を補うために、レーダーを高い場所、つまり航空機に大型レーダーを搭載して、水平線以遠を探知するために開発されたものである。また有事においては、地上の早期警戒レーダー網は真っ先に攻撃を受けて機能を失うために、地上レーダーの代替機能もあわせもっている。航空自衛隊も1998年(平成10)3月からAWACSを導入し、2010年の時点で4機を保有している。

 戦闘機や攻撃機はレーダー探知を避けるために低空飛行で接近してくるので早期探知が大変むずかしくなってきている。また航空機の速度が非常に速いため、レーダーで探知しても敵機はすぐ目の前ということになりかねない。そこで少しでも高い場所から遠方を監視して、早期に探知するためにレーダーを山頂などに設置しているが、地理的条件などの制約がある。そこでアメリカは1970年からAWACSの開発に着手し、ボーイング707型旅客機の胴体上に直径9.14メートルの回転式レーダーを搭載したE-3セントリーAWACSが1977年に就役した。同機は半径400キロメートルの範囲にある目標600個を一度に探知し、そのうち200個を識別・追跡できる。機内には状況表示コンソールが多数あり、オペレーターが各種の情報処理にあたっている。最新のE-3C型は弾道ミサイルの追跡能力も有するといわれている。航空自衛隊が導入したのは、機体がボーイング767型であることから居住性が向上したものの、性能は基本的に同じである。このようにAWACSは早期警戒にはなくてはならない高性能兵器ではあるが、航空自衛隊が導入したAWACSの価格が1機570億円と高価なように、どこの国でも導入できるというものではない。このため輸送機やコミューター機にレーダーを搭載した廉価型AWACSも開発された。現在世界でAWACSを保有しているのはアメリカ、イギリス、フランス、NATO北大西洋条約機構)、サウジアラビア(以上E-3)、日本(E-767)、ロシア(A50メインステイ)、イスラエル(ファルコン707)、オーストラリア(B-737ウェッジテール)、中国(KJ-2000)、スウェーデン(サーブ340)などである。中国のKJ-2000は当初イスラエルのファルコン・システムを導入する予定であったが、その後国産化された。レーダーは回転せずに、レドーム(レーダーアンテナの覆い)内に三角形にレーダーを配備して360度をカバーしている。2008年の北京オリンピックでは空域管制に活躍したといわれている。E-3C型の性能は、全長46.61メートル、全幅44.42メートル、全高12.73メートル、最大離陸重量15万1953キログラム、最大時速854キロメートル、最大航続時間11時間、乗員17~23人である。

[宮岡千代道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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