日本大百科全書(ニッポニカ) 「笑林」の意味・わかりやすい解説
笑林
しょうりん
中国における最初の笑話集。『隋書(ずいしょ)』「経籍志(けいせきし)」には3巻、後漢(ごかん)の邯鄲淳(かんたんじゅん)撰(せん)とあり、『唐書(とうじょ)』「芸文志(げいもんし)」には「何自然(かじねん)笑林三巻」、『宋書(そうじょ)』「芸文志」には「路氏(ろし)笑林三巻」とある。原本は伝わらず、『太平広記(たいへいこうき)』『太平御覧(ぎょらん)』『芸文類聚(げいもんるいじゅう)』その他に散見するだけであるが、きわめて短い形式のなかに風刺と笑いと機知を含んだ滑稽(こっけい)な話のほかに、歴史上の人物の逸話も混じっていたようである。『隋書』「経籍志」で撰者に擬せられている邯鄲淳(132―?)は、後漢末の優れた儒者で、三国時代には魏(ぎ)の曹操(そうそう)(武帝)に優遇され、その子曹丕(そうひ)(文帝)が帝位につくにおよんで博士・給事中(きゅうじちゅう)に取り立てられたが、そのとき彼は90余歳だったという。
[駒田信二]
『松枝茂夫・武藤禎夫編・訳『中国笑話選』(1964・平凡社・東洋文庫)』