中国、南朝宋(そう)の劉義慶(りゅうぎけい)(403―444)が著した逸話集。後漢(ごかん)末から東晋(とうしん)までの人物の言行や逸話を、徳行、言語など36のテーマに分類し、集録している。この書は、初め単に『世説』とよばれていた。その後『世説新書』と改題され、唐代からは現在の名称も使われるようになり、宋代以後定着した。人物の言行や逸話を事実として記録しようとしている点で、史書の性格も帯びているが、人物の個性を表現するために、結果的にはかなり意図的なフィクションが混じっており、明らかに史実に反する話も多い。しかし簡潔な短文形式で示される個性の断面には、それぞれに貴族社会の風俗や価値観がうかがわれ、全体として魏晋(ぎしん)の時代相を鮮やかに映し出している。また当時の口語なども用いられているため、言語資料としても重視されている。
なおこの書の理解に欠かせないのは、南朝梁(りょう)の劉孝標(462―521)の注である。劉孝標の注は、語釈は少なく、他の文献によって、本文を補足したり、あるいは事実に反していることを例示しつつ、『世説新語』の世界をより立体化している。本文に劣らぬ貴重な資料群である。
[成瀬哲生]
『森三樹三郎訳『中国古典文学大系9 世説新語・顔氏家訓』(1969・平凡社)』▽『目加田誠訳注『新釈漢文大系76~78 世説新語』(1975~78・明治書院)』▽『竹田晃訳注『中国の古典21・22 世説新語』(1984・学習研究社)』▽『井波律子著『中国人の機智――「世説新語」を中心として』(中公新書)』
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…中国,有名人の逸話や史書に記載されないような細かな事跡を記録したもの,またはその集。この代表的作品として南朝宋の臨川王劉義慶の撰に成る《世説新語》を挙げることができる。それには後漢から東晋に及ぶまでの有名人の逸話を徳行・言語・政治・文学・雅量・豪爽・傷逝・賢媛・任誕・倹嗇・汰侈・惑溺など36門に分類して収載している。…
… 〈小説〉はもともとささいな雑記の集録であった。魏・晋以後二つの方向をとり,干宝の《捜神記》と劉義慶の《世説(せせつ)新語》とがそれぞれを代表する。前者は怪異談を集め,超自然への恐れを核とする幻想の拡大へ向かい,仏教や道教の霊験記の類と親近性がある。…
※「世説新語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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