中国,漢より北宋初期までの小説類をひろく集めた書。北宋の太平興国3年(978)に李昉(りぼう)などによって奉勅撰された。全500巻,目録10巻。7000余編の物語がその内容によって神仙・方士・異僧・報応・名賢・貢挙・豪俠・儒行・書・画・医・相・酒・詼諧(かいかい)・婦人・情感・夢・幻術・神・鬼・妖怪・再生・竜・虎・狐・蛇・雑伝記など92項目に大分類され収録されている。約500種の古小説および小説集から採録されているが,現在はその半数が散逸しているので,この書は貴重である。原本は981年に木版印刷されたが,不急不用の書籍ということで増刷されなかったため流伝が少なく,ようやく明末におよんで談愷(たんがい)や許自昌によって校訂再刊され,清の黄晟(こうせい)により小型本が出版されて広まった。朝鮮では李朝初期に輸入され,《太平広記詳節》《太平広記諺解》が作られて広く愛読され,李朝漢文小説に影響を与えた。日本でも江戸初期には《怪談全書》が出るなど,読本や黄表紙などに多くの題材を提供した。
執筆者:内山 知也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、宋(そう)代の物語全書。500巻。977年、『太平御覧(たいへいぎょらん)』と同じく、李昉(りほう)らが勅命を受けて編纂(へんさん)にとりかかり、翌年完成した。内容は、神仙、女仙、道術、方士から動植物に至るまで、類書風にたてられた92の項目のもとに、上代から宋代に至るまでの間に著された小説を集め、それぞれの話の末に出典を付記している。集められた話は、志怪(しかい)小説、志人小説、伝奇小説など、宋代以前の文言(文語体)小説。今日もはや原形のみられない上代の書物からの引用が多いので、その意味でも利用価値は高い。刊本としては、明(みん)の談愷(たんがい)の出版したもの(談本(だんぽん))、明の許自昌(きょじしょう)の出版したもの(許本(きょほん))、清(しん)の黄晟(こうせい)が巾箱(きんそう)本(小型の本)として出版した黄氏巾箱本(黄本(こうほん))などが伝えられており、近年では、1959年に、北京(ペキン)の人民文学出版社が、談本を底本とし、許本、黄本を参考にし、それに明の沈弁之(しんべんし)の写本と清の陳鱣(ちんせん)の校本を参照して活字本を出版した。
[高橋 稔]
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