日本大百科全書(ニッポニカ) 「駒田信二」の意味・わかりやすい解説
駒田信二
こまだしんじ
(1914―1994)
小説家、中国文学者。大阪に生まれ、三重県で育つ。東京帝国大学中国文学科卒業。1948年(昭和23)『人間』に発表した『脱出』は、中国での戦争体験に基づくヒューマンな作品で、人間文学賞を受賞(翌年鎌倉文庫刊)。その後も『石の夜』(1957)、『島』(1971)など重厚な小説を刊行。『文学界』の同人雑誌評を長らく担当し、また朝日カルチャー・センターの駒田教室より、芥川(あくたがわ)賞作家の重兼芳子(しげかねよしこ)が出た。『水滸伝(すいこでん)』『棠陰比事(とういんひじ)』『今古奇観』など中国文学の訳書、『私の小説教室』(1981)、『江戸小咄(こばなし)』(1985)などの著書もある。島根大学教授、早稲田(わせだ)大学客員教授を務めた。
[紅野敏郎]
『『脱出』(『現代の文学38』所収・1974・講談社)』▽『『島』(1971・筑摩書房)』