算法地方大成(読み)さんぽうじかたたいせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「算法地方大成」の意味・わかりやすい解説

算法地方大成
さんぽうじかたたいせい

租税の計算法や普請(ふしん)の巨細(こさい)、簡易測量法などを解説した地方(じかた)算法書の一つ。和算関流(せきりゅう)を学んだ長谷川寛(はせがわひろし)(善左衛門)校閲、その弟子の秋田義一(よしかず)(十七郎)編。1837年(天保8)刊。現在五冊本と一冊本の2種が伝わる。長谷川が門弟の教育に長じ、門弟名で書物編纂(へんさん)することが多かったことから、本書も長谷川寛自身の著であるとする説が有力である。租税之部、普請之部、量地之部の3部からなる。専門用語には仮名が付され、随所に解説図が挿入されるなど、初学者には親切ていねいな解説書となっている。なお、本書に対して批判を加えた書に栗田宜貞(くりたのぶさだ)の『算法地方大成斥非問答(せきひもんどう)』がある。

[飯島千秋]

『村上直・荒川秀俊校訂『算法地方大成』(1976・近藤出版社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「算法地方大成」の意味・わかりやすい解説

算法地方大成
さんぽうじかたたいせい

地方書 (じかたしょ) の一つ。長谷川寛閲,秋田義一編。木版本,全5巻。江戸で天保8 (1837) 年5月官許を得て刊行されたが,同年8月絶版を命じられた。治農の心得,検地,土木工事,量地器具の知識を図入りで説明した手引書であるが,専門知識の普及を嫌う幕府代官たちの意向で絶版になったといわれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の算法地方大成の言及

【地方書】より

…しかし幕府の享保改革や諸藩の藩政改革においては地方支配機構の整備が急務とされ,幕府の下級地方役人や諸藩の郡(こおり)奉行など地方に精通したいわゆる地方巧者(じかたこうしや)によって地方書が編纂され,地方制度の解説書として木版本の刊行あるいは写本として広く普及するようになる。地方書のおもなものには《民間省要》《増補田園類説》《地方凡例録》《地方落穂集》《農政座右》《勧農或問(わくもん)》などがあり,検地,普請などの計算方法を記述した《算法地方指南》《算法地方大成》などの地方算法書もある。【佐藤 常雄】。…

【長谷川寛】より

…これが2代長谷川善左衛門弘(1810‐87)である。塾から出版された数学書の中で,《算法新書》(千葉胤秀編,1830),《大全塵劫記》(山本賀前編,1832),《算法地方大成》(秋田義一編,1837)はとくに有名で,なかでも《算法新書》は初歩から専門の分野に至る数学の集大成で,明治中期まで何回も改版され広く読まれた。長谷川寛は図形の変形について新しい方法を見つけ,これを変形術,極形術と名付け,《算法変形指南》(福田廷臣編,1820),《算法極形指南》(秋田義一編,1836)として公刊した。…

【和算】より

…長谷川の塾を長谷川数学道場といい,千葉胤秀,山本賀前,秋田義一らの数学者が輩出した。出版した数学書も,《算法新書》(1830),《大全塵劫記(たいぜんじんこうき)》(1832),《算法地方大成》(1837)など,いずれもベストセラーになっている。長谷川の業績中,変形法,極形法という方法は,ある図形を変形してもそこに成り立つ性質が不変である関係を利用して,複雑な図形の性質を単純化して関係式を導く方法で,《算法変形指南》(1820),《算法極形指南》(1836)にまとめられている。…

※「算法地方大成」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android