日本大百科全書(ニッポニカ) 「管理職ユニオン」の意味・わかりやすい解説
管理職ユニオン
かんりしょくゆにおん
union of management staff
おもに管理職にある者を組合員としている労働組合。バブル経済崩壊後の1990年代に、低成長・不況期に直面した企業が「リストラクチャリング」(リストラ、再構築)のため希望退職者の募集・人員整理を行ったが、その波は一般サラリーマンだけでなく、労働組合に加入していない、あるいは加入できない中間管理職などにも及んだ。従来の民間の管理職組合は青森銀行の管理職組合や日本航空の機長組合など少数の例を数えるのみであったが、このような厳しい経営環境のなかで、管理職の雇用条件・地位、さらには経営の民主化などを求めて管理職の労働組合結成がみられるようになった。
1991年(平成3)6月、接着剤メーカー、セメダインの管理職組合「CSUフォーラム」が結成された。労働組合法第2条では、監督的地位にある者、使用者の利益を代表する立場にある者が参加する団体は労働組合として認めないとしているため、経営陣は団体交渉を拒否したが、1996年7月、東京地労委はセメダイン管理職組合を労働組合と認め、会社側の団体交渉拒否を不当労働行為として救済命令を出している。1993年12月、個人加盟で企業横断的な組織である全労協全国一般東京労働組合管理職ユニオン(東京管理職ユニオン)が結成された。1995年4月には、こうした管理職組合を含めた8組織により「管理職・専門職・中高年労働者の全国ネットワーク」がつくられ、情報交換や雇用問題の調査・研究に取り組んでいる。
[川崎忠文]
中高年だけでなく若年層の就職難など年々雇用情勢が悪化しているなかで、倒産・リストラホットライン、若者ホットラインなどで電話相談に応じる組織も現れた。また別の組織化の動きとして、全日本自動車産業労働組合総連合会(自動車総連)、日本鉄鋼産業労働組合連合会(鉄鋼労連)、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会(電機連合)、ゼンセン同盟など既存の単位産業組合も、組合員の範囲などを見直し、管理職の組織化を目ざしている。
[川崎忠文・早川征一郎]
『佐高信・設楽清嗣編著『「管理職ユニオン」宣言』(1995・社会思想社)』