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不当労働行為 ふとうろうどうこうい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

不当労働行為
ふとうろうどうこうい

使用者が労働組合活動に対して行う違法な侵害行為。労働組合法 7条は (1) 組合加入や組合活動を理由とする不利益取扱い黄犬契約,(2) 団体交渉拒否,(3) 支配介入と経費援助,(4) 労働委員会における労働者の発言などを理由とする不利益取扱い,の4種の行為を不当労働行為として列挙している。申立に基づき労働委員会が救済命令を発する行政的救済のほか,裁判所による司法的救済の方法もある。なおアメリカでは使用者と並んで労働組合の不当労働行為も定めているが,日本では採用されていない。

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デジタル大辞泉の解説

ふとう‐ろうどうこうい〔フタウラウドウカウヰ〕【不当労働行為】

使用者が労働者に対してその団結権団体交渉権争議権および労働組合の自主性などを侵害する行為。労働組合法では、組合員であることその他の理由で不利益な取り扱い(差別待遇)をする行為、黄犬契約団体交渉拒否・支配介入など。労働者または労働組合は労働委員会裁判所に救済申し立てをすることができる。

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百科事典マイペディアの解説

不当労働行為【ふとうろうどうこうい】

使用者が労働者の団結権を侵害する行為。日本の労働組合法は,憲法第28条の労働者団結権保障の精神に基づいて使用者の不利益取扱い黄犬契約・団体交渉拒否・支配介入・報復的差別待遇を不当労働行為として禁止している。
→関連項目解雇企業犯罪緊急命令公益委員御用組合争議行為タフト=ハートリー法団体交渉権ロックアウト和解

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世界大百科事典 第2版の解説

ふとうろうどうこうい【不当労働行為】

労働組合活動の自由を制約する,使用者の反組合的行為。憲法28条は,勤労者の団結権,団体交渉権および争議権を保障し,その権利の具体化のために,労働組合法は,使用者の特定の行為を不当労働行為として禁止する(7条)とともに,救済機関として労働委員会を設置した(19条)。組合運動,とくに争議行為の自由を法的に保障する手段としては,刑事罰および損害賠償からの解放(刑事免責,民事免責)があるが,不当労働行為の禁止は,それらに比べて使用者の反組合的行為を直接規制するところに特質を有する。

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大辞林 第三版の解説

ふとうろうどうこうい【不当労働行為】

使用者が労働組合運動に対して行う妨害的行為。組合員に対する不利益処分・団体交渉拒否・支配介入・報復的差別待遇などで、労働組合法により禁止されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不当労働行為
ふとうろうどうこうい
unfair labour practice

使用者が、労働者および労働組合が行う組合活動、団結活動に対して、妨害、抑圧、干渉したり、あるいは弱体化を図ったりする行為のこと。これらの使用者の行為を国家法によって禁止し、違反行為が発生した場合に、国家機関(裁判所および労働委員会)が労働者および労働組合を救済する制度を不当労働行為制度という。この制度は、国家によって団結活動を積極的に保障することを目的にしている。[村下 博・吉田美喜夫]

沿革

労働運動は、現代でこそ国家によって法的に承認されているが、労働者による団結活動の発生以来、その運動は国家あるいは使用者によって弾圧・抑圧される歴史を経てきた。そして現代では、これらの弾圧・抑圧を跳ね返し、団結活動上の刑事免責や民事免責を獲得するに至っている。しかし労働運動にとってこれだけでは十分な団結活動の保障とはいえない。団結活動を理由とする不利益取扱い、たとえば解雇や配置転換、賃金差別、各種の処分などの使用者の不当な行為を防止・禁止することが必要不可欠である。このような積極的な団結活動保障制度が不当労働行為制度であり、それを最初に制度化したのがアメリカのワグナー法(1935)である。この制度は第二次世界大戦後、各国においてさまざまな形態で導入されるに至っている。[村下 博・吉田美喜夫]

日本の不当労働行為制度

日本の場合、最初に不当労働行為制度が導入されたのは、旧労働組合法(1945)においてであった。これは、アメリカのワグナー法を継承したものである。その後、日本国憲法が制定され(1946)、第28条で労働基本権が保障されたことから、現行法である労働組合法(1949)が定める不当労働行為制度は、その具体化と考えられる。したがって、日本の不当労働行為制度は、労働者の生存権の保障という労働基本権の理念と不可分であるのに対し、ワグナー法の不当労働行為制度は、自由で対等な州際取引の実現という政策目的の手段とされた。このような制度趣旨の違いは、アメリカでは労働組合による不当労働行為も認められている点にもっとも明確に表れている。戦前、日本では労働運動は未成熟であったが、戦後、著しい発展を遂げることになった。このことに不当労働行為制度が大きく貢献したことは疑いない。[吉田美喜夫]

不当労働行為の類型

労働組合法第7条は、使用者による不当労働行為として、差別待遇と黄犬(おうけん)契約(1号)、団体交渉拒否(2号)、支配・介入と経費援助(3号)、労働委員会に対する申立てや同委員会の審査・争議調整などにおける労働者の行為を理由とする差別待遇(4号)をあげて、これらを禁止している。1号の場合、労働者が「労働組合の組合員であること」「労働組合を結成し、これに加入すること」、あるいは「労働組合の正当な行為をしたこと」を理由として、使用者は労働者に対して解雇などの差別待遇(不利益取扱い)をしてはならないとしている。2号では、正当な理由なく使用者が労働者の代表者と団体交渉を拒否することを禁止している。さらに、3号では、さまざまな方法で労働組合の結成や運営に支配介入すること、労働組合の運営に対して経費援助をすることを禁止している。ただし、禁止される経費援助は、それによって労働組合が使用者の支配を受けることになる場合のことであって、あらゆる経費援助が禁止されるわけではない。[村下 博・吉田美喜夫]

不当労働行為の救済

使用者による不当労働行為が行われた場合、その救済方法として次の二つがある。一つは、裁判所による司法的救済であり、もう一つは、労働委員会による準司法的救済である。日本ではこれら双方の利用が可能である。しかし、簡易・迅速に不当労働行為からの救済を図るという不当労働行為制度の趣旨からして、準司法的救済の利用がふさわしいが、労働委員会の命令の効力を裁判所で争うことができるので、実際には迅速な救済ができないという問題がある。救済の基本的な考え方には、使用者の不当労働行為に刑事上の制裁を加える直罰主義と、不当労働行為の発生した以前の状態に戻す(たとえば解雇された場合の原職復帰)という原状回復主義の二つがあり、旧労働組合法(1945)では直罰主義を採用していたが、現行労働組合法では原状回復主義を採用している。
 不当労働行為が行われた場合、労働者あるいは労働組合は労働委員会に申立てを行い、救済を求めることができる。申立てがあると、労働委員会は公益委員が調査・審問を行い、不当労働行為が成立する場合には救済命令を、成立しない場合には棄却命令を発することになる。救済命令としては、(1)原職復帰、バック・ペイ(賃金遡及(そきゅう)払い)などの原状回復命令、(2)団体交渉応諾命令、(3)支配・介入中止命令、(4)不当労働行為に対する謝罪文の掲示(ポスト・ノーティス)をさせる命令などがある。不当労働行為事件の調査、審問、命令発布などの手続については労働組合法第27条が定めている。[村下 博・吉田美喜夫]
『中山和久著『不当労働行為論』(1981・一粒社) ▽片岡・萬井隆令・西谷敏編『労使紛争と法』(1995・有斐閣) ▽小宮文人著「不当労働行為の認定基準」(『講座21世紀の労働法第8巻 利益代表システムと団結権』所収・2000・有斐閣) ▽道幸哲也著『不当労働行為法理の基本構造』(2002・北海道大学図書刊行会) ▽中央労働委員会事務局編『不当労働行為事件命令集』各年版(労委協会)』

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世界大百科事典内の不当労働行為の言及

【労働委員会】より

…労使紛争の調整と不当労働行為の審査・救済を主目的とする独立行政委員会。行政委員会という形態は,労使関係につき専門的知識・経験を有する委員が,適切かつ柔軟な事件処理をするために採用されたといわれる。…

【ワグナー法】より

…NIRAが違憲判決(1935)をうけたのち,それに代わるものとして全国労働関係法National Labor Relations Act,通称ワグナー法(提案者ワグナーRobert F.Wagner(1877‐1953)に由来する)が成立した。ワグナー法は組合の交渉力を法的に強化し,労使交渉力の均衡をはかる目的で,経営者側に〈不当労働行為〉の規定をもうけた。不当労働行為には,御用組合の援助,組合員の差別待遇,団体交渉拒否,労働者に保障された権利行使の妨害などが含まれている。…

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