不当労働行為(読み)フトウロウドウコウイ

デジタル大辞泉 「不当労働行為」の意味・読み・例文・類語

ふとう‐ろうどうこうい〔フタウラウドウカウヰ〕【不当労働行為】

使用者が労働者に対してその団結権団体交渉権争議権および労働組合の自主性などを侵害する行為。労働組合法では、組合員であることその他の理由で不利益な取り扱い(差別待遇)をする行為、黄犬契約団体交渉拒否・支配介入など。労働者または労働組合は労働委員会裁判所に救済申し立てをすることができる。

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共同通信ニュース用語解説 「不当労働行為」の解説

不当労働行為

経営側が正当な理由なく、労働者との団体交渉を拒否するなどの行為で、労働組合法によって禁止されている。労組法は、労働基準法よりも広い概念で労働者を定義しており、使用者と雇用関係を結んでいない働き手も対象となる。労組法に基づいて設置された労働委員会が、不当労働行為だと判断したケースは、是正のために救済命令を出す。

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精選版 日本国語大辞典 「不当労働行為」の意味・読み・例文・類語

ふとう‐ろうどうこういフタウラウドウカウヰ【不当労働行為】

  1. 〘 名詞 〙 使用者が労働組合活動に対して行なう妨害的な行為。不利益処遇・団体交渉拒否・支配介入などで、労働組合法によって禁止される。

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改訂新版 世界大百科事典 「不当労働行為」の意味・わかりやすい解説

不当労働行為 (ふとうろうどうこうい)

労働組合活動の自由を制約する,使用者の反組合的行為。憲法28条は,勤労者の団結権,団体交渉権および争議権を保障し,その権利の具体化のために,労働組合法は,使用者の特定の行為を不当労働行為として禁止する(7条)とともに,救済機関として労働委員会を設置した(19条)。組合運動,とくに争議行為の自由を法的に保障する手段としては,刑事罰および損害賠償からの解放(刑事免責民事免責)があるが,不当労働行為の禁止は,それらに比べて使用者の反組合的行為を直接規制するところに特質を有する。日本では,争議行為や組合活動を理由とする処分の事件が多いので,不当労働行為制度は重要な役割を果たしている。

 この不当労働行為制度は,アメリカの全国労働関係法(通称ワグナー法,1935)の影響を強くうけたものといわれる。同法は,ニューディール政策の一環として立法化され,使用者のなす,組合員に対する差別待遇,組合運営への支配介入,団交拒否等を不当労働行為unfair labor practiceとして禁止するとともに救済機関として全国労働関係局National Labor Relations Board(NLRB)を設置した。アメリカでは,1947年に労使関係法(通称タフト=ハートリー法)により,不当なストライキボイコット等が〈労働組合の不当労働行為〉として禁止されるに至ったが,日本では,使用者の不当労働行為のみが禁止されている。不当労働行為制度は,日本以外にも,インドの労働組合法(1947),カナダの労使関係・争議調査法(1948),イタリアの労働者憲章法(1970),イギリスの労使関係法(1971)などに継受されたといわれる。

 不当労働行為制度の目的をいかに把握するかについて,学説上二つの潮流がある。その一は,もっぱら団結権,団交権の擁護を目的とみなす立場で,権利侵害行為たる側面が重視される。その二は,そのような側面を認めつつも,むしろ円滑な労使間ルールの確立を主目的とみなす考えであり,将来における労使関係の安定が強調される。両者の立場は,条件付救済命令の適否等につききわだった対立を示している。

不当労働行為として禁止される行為は,組合活動を事実上制約する行為であり,労働組合法7条はそれを以下のように類型化している。もっとも,同一の行為が二つ以上の類型に同時にあてはまることもありうる。

(1)不利益取扱いもしくは差別待遇(7条1号) 組合の結成,組合所属もしくは組合の正当な行為を理由とする不利益取扱い。本人だけではなく,仲間の組合員に対する見せしめ的効果の大きい端的な反組合的行為である。この不利益取扱いの態様としては,労働契約締結上のものとして,採用拒否および黄犬(おうけん)契約の締結があげられる。黄犬契約とは,組合から脱退すること,もしくはそれに加入しないことを雇用(継続)の条件とする労働契約である。契約存続上のものとしては,賃金・諸手当,配置転換・出向,懲戒処分,昇進・昇格,福利厚生などにつき差別をすることであり,契約終了をめぐるものとしては,(懲戒)解雇,短期労働契約の更新拒否等があげられる。そのほかに,私生活上や組合活動上の不利益も含まれる。あくまで事実上の不利益(たとえば,非組合員にのみシャワーを使用させること)が問題となる。最近は,査定をめぐる差別事件が多く,その不当労働行為性の認定はきわめてデリケートといわれる。

 不当労働行為制度は,〈正当な組合活動〉を理由とする不利益取扱いだけを禁止している。そこで,なにが〈正当な〉〈組合活動〉かが問題になる。この正当性については,多様な争議行為とともにビラ貼りリボン闘争など企業施設内もしくは就業時間中になされる組合活動が判例・学説上問題となっている。日本の企業別組合の特徴,つまり企業内でしか効果的な組合活動をなしえないとの実態をいかに評価するかによって,その判断が分かれているといわれる。次に,組合活動性については,争議行為や団体交渉等機関決定に基づく行動は当然として,個々の組合員による自主的活動も広範に保護の対象となる。

 この不利益取扱いにつき,使用者は,勤務成績不良等をその理由としてあげる場合が多い。そこで,当該処分が組合活動を理由にするものか,相当な理由によるものか,が争いになる。これは,不当労働行為意思論として論争がなされているが,実務上は,いずれが決定的動機であるかによって判断されている。その際,被処分者の組合内における地位,処分の理由,経緯,時期,組合活動に対する影響,労使慣行,とくに同一行為に対し同程度の処分がなされていたか,背景となる労使関係等諸般の事情が考慮される。

(2)支配・介入(7条3号) 組合の結成や運営に対する支配・介入行為は,組合活動の自由を直接に制約するものであり,典型的な不当労働行為である。その具体的態様はまったく千差万別であり,組合結成に対する妨害としては,自主的組合の結成への介入,御用組合などの対抗的組合の結成,援助がある。また,組合組織に関するものとしては,組合員の範囲,組合人事・選挙および上部団体への加入につき干渉することが,また組合運営に対するものとしては,組合大会監視,組合活動家に対する解雇・威嚇,施設管理権もしくは業務命令権を理由とする組合活動の妨害,組合組織の切りくずし,便宜供与の一方的廃止等があげられる。最近では,併存組合の一方を優遇することによって他方の組合活動を抑制する,との事案が多くみられる。支配・介入といってもそれはあくまでも〈使用者〉の行為でなければならない。そこで,企業内のいかなる地位,職責にある者の行為がそれにあたるかが問題となる。法人の理事や代表者,また職制上広範な労務管理権限を有する部長や課長の行為は,原則として,また,係長や主任等の下級職制についても,職制上の地位を利用したとみなされる場合には,使用者の行為とされる。一方,平従業員や第三者の行為は,使用者から特別の要請を受けたものでないかぎり不当労働行為とみなされない。同時に,企業外の親会社や元請会社の使用者性も問題となっている。たとえ法人格が相違していても,子会社や下請会社の労務政策に実質的に強い影響力を及ぼしている場合には,不当労働行為制度上の使用者とみなされる(使用者概念の拡大)。

 支配・介入の禁止の一環として,組合に経費援助をすることも,組合の自主性を阻害するとの理由で,明文をもって禁止されている。もっとも,就業時間中の団交参加につき賃金カットをしないこと,組合の福利基金への寄与および最小限の広さの事務所の供与は,例外的に許される。

(3)団交拒否(7条2号) 労働組合法は,組合運営の自由を保障するだけではなく,その後の労使交渉の過程にも関与しており,使用者が労働者の代表と団体交渉をすることを正当な理由なしに拒否することを不当労働行為として禁止している。団交拒否は,組合不承認を意味し,円滑な労使間ルールの確立を阻害するからである。この団交拒否事件は,最近増加する傾向にある。団交拒否の正当性に関しては,おもに,(a)団交主体,担当者,(b)交渉事項,(c)交渉ルールが争点となる。(a)については,雇用関係の有無が問題となり,組合側につき,合同労組,被解雇者の結成した組合,上部団体が,また,使用者側については,元請会社,親会社もしくは協同組合の使用者性が争われている。ここにおいても,使用者概念の拡大がみられる。なお,交渉担当者については,団交権委任禁止条項の効力が論点になっている。(b)については,特定の交渉テーマが労働条件といかに関連するかが争われ,個別人事,企業年金等の特殊手当,福利厚生,組合員以外の労働条件,経営・生産に関する事項等が問題となっている。経営事項であっても,労働条件に関連する程度で交渉事項になるとみなされる(新機械導入にともない配転が余儀なくされると,その配転については交渉事項となる)。(c)については,交渉の日時・時間,場所,参加者の構成・数などがよく問題となる。なにが適切な交渉ルールかの判断は困難であるが,実際は,組合側の意向が重視されている。

 団交拒否には,団交自体を拒否する場合と,団交には形式的に応じても実質的な論議をしない場合がある。後者は,誠実団交義務違反とみなされる。いかなる交渉態度が誠実か,については,交渉内容や交渉の経緯,相手側の交渉態度にも左右されるので,明確な基準を定めることは困難である。それでも一般的には,協約締結にむけた真摯な努力が必要とされ,交渉回数・時間,交渉担当者の地位,提案・対案の有無,内容,説明のしかたや程度,みずからの提案に対する固執の程度,資料提供の有無等が考慮されている。もっとも,自主交渉のたてまえがあるので譲歩することまでは義務づけられてはいない。この自主交渉原則と誠実団交の要請をいかに調整するかは,きわめてデリケートな問題である。

(4)不当労働行為の申立等を理由とする不利益取扱い(7条4号) 不当労働行為の申立て,労働委員会における証拠の提示や発言を理由とする不利益取扱いは,不当労働行為制度の運営の円滑化の観点から禁止される。禁止される行為の性質から,組合員の行為だけではなく,非組合員や会社職制の行為も保護の対象となる。

不当労働行為の救済機関として,行政委員会たる労働委員会(地方労働委員会,中央労働委員会)が設置されている(27条)。労働委員会は,労使および公益を代表する委員からなる三者構成であるが,不当労働行為の審理は準司法的機能とされ,公益委員のみの権限とされる。不当労働行為の申立てがなされると,調査および審問を通じてその成否を判断し,迅速に事案に応じた適切な救済命令を発する必要がある。しかし,実際には,命令が出される以前に労使の和解で自主的に解決される事件が多く,また,審査手続も必ずしも迅速ではないといわれる。審査手続遅滞の解消は,労働委員会制度の最大の課題である。なお,この点については,労使双方の納得のいく自主解決のために,ある程度の時間は必要とされる,との側面も否定できない。

 地労委の救済命令に対し不服のある者は,中央労働委員会に再審査の申立てか,もしくは命令の取消訴訟を裁判所に提起しうる。これらの手続の最中には,命令が確定しないので強制的に命令を履行させることができなくなる。その間に,組合活動が大幅に沈滞する場合も少なくないので,労働組合法は,取消訴訟が提起された場合には,裁判所は緊急命令を発しうると定め(27条8項),暫定的な救済措置を認めている。

 確定した救済命令もしくは緊急命令に違反すると10万円(作為を命じる命令の場合には,その命令不履行の日数1日につき10万円の割合で算定した金額)以下の過料に処される(32条)。また,確定判決により支持された命令に違反した場合には,1年以下の禁錮もしくは10万円以下の罰金に処される(28条)。

 不当労働行為の形態は多様なので,労働委員会は,事案に応じた柔軟かつ適切な命令を発することが期待されている。しかし,実際上は,〈原状回復〉の観点から不当労働行為の類型に応じてほぼ定型的な命令が出されている。(1)不利益取扱い 差別待遇については,賃金差額の支払等具体的な差別是正措置が命じられる。また,解雇がなされると,原職復帰および賃金相当額,いわゆるバック・ペイの支払が命じられる。このバック・ペイからの中間収入(解雇期間中,他で就労したことにより得た収入)の控除の適否について,労働委員会と裁判所は明確な対立を示している。(2)支配介入については,当該行為の中止,将来にわたる禁止が命じられる。(3)団交拒否については,団交に応じること,もしくは拒否をしないことが命じられる。また,誠実に団交することが命じられることもあるが,具体的にいかなる交渉態度をとるべきかまでは明示されることは少ない。その他,各事案につき,陳謝文の手交や命令の内容を周知徹底させるためのポスト・ノーティスpost noticeの掲示が命じられる場合もある。

 救済命令の実効性については,命令が出されること自体によって労使紛争の自主解決にプラスになるとの側面もあるが,救済措置としては必ずしも十分ではないとの評価が一般的である。とくに,(2)(3)については,将来の行為のみが禁止されるにすぎず,それ以前の不当労働行為は事実上黙認される結果になる,との批判がある。

 ところで,不当労働行為の救済方法・機関としては種々のものが考えられる。旧労働組合法(1945公布)は,行為者に刑罰を科す直罰主義を採用していたが,刑事規制に伴う制約(罪刑法定主義等)や被害者の救済にならないことから1949年の改正によって現行の行政救済主義に変わった。行政救済主義と並行して裁判所による救済も認められるかは,現在において労働法学上の重要な論点となっている。〈不当労働行為〉たる法律行為が無効なこと,およびそれを理由とする損害賠償の請求が可能なことにはほぼ異論がない。しかし,端的に反組合的行為の差止めを目的とする団結権妨害排除や団交応諾の仮処分が認められるかについては争いがある。この論争の背景には,現行の労働委員会の運営をいかに評価するか,とくに,それが十分な役割を果たしているかどうかといった点についての判断の相違がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不当労働行為」の意味・わかりやすい解説

不当労働行為
ふとうろうどうこうい
unfair labour practice

使用者が、労働者および労働組合が行う組合活動、団結活動に対して、妨害、抑圧、干渉したり、あるいは弱体化を図ったりする行為のこと。これらの使用者の行為を国家法によって禁止し、違反行為が発生した場合に、国家機関(裁判所および労働委員会)が労働者および労働組合を救済する制度を不当労働行為制度という。この制度は、国家によって団結活動を積極的に保障することを目的にしている。

[村下 博・吉田美喜夫]

沿革

労働運動は、現代でこそ国家によって法的に承認されているが、労働者による団結活動の発生以来、その運動は国家あるいは使用者によって弾圧・抑圧される歴史を経てきた。そして現代では、これらの弾圧・抑圧を跳ね返し、団結活動上の刑事免責や民事免責を獲得するに至っている。しかし労働運動にとってこれだけでは十分な団結活動の保障とはいえない。団結活動を理由とする不利益取扱い、たとえば解雇や配置転換、賃金差別、各種の処分などの使用者の不当な行為を防止・禁止することが必要不可欠である。このような積極的な団結活動保障制度が不当労働行為制度であり、それを最初に制度化したのがアメリカのワグナー法(1935)である。この制度は第二次世界大戦後、各国においてさまざまな形態で導入されるに至っている。

[村下 博・吉田美喜夫]

日本の不当労働行為制度

日本の場合、最初に不当労働行為制度が導入されたのは、旧労働組合法(1945)においてであった。これは、アメリカのワグナー法を継承したものである。その後、日本国憲法が制定され(1946)、第28条で労働基本権が保障されたことから、現行法である労働組合法(1949)が定める不当労働行為制度は、その具体化と考えられる。したがって、日本の不当労働行為制度は、労働者の生存権の保障という労働基本権の理念と不可分であるのに対し、ワグナー法の不当労働行為制度は、自由で対等な州際取引の実現という政策目的の手段とされた。このような制度趣旨の違いは、アメリカでは労働組合による不当労働行為も認められている点にもっとも明確に表れている。戦前、日本では労働運動は未成熟であったが、戦後、著しい発展を遂げることになった。このことに不当労働行為制度が大きく貢献したことは疑いない。

[吉田美喜夫]

不当労働行為の類型

労働組合法第7条は、使用者による不当労働行為として、差別待遇と黄犬(おうけん)契約(1号)、団体交渉拒否(2号)、支配・介入と経費援助(3号)、労働委員会に対する申立てや同委員会の審査・争議調整などにおける労働者の行為を理由とする差別待遇(4号)をあげて、これらを禁止している。1号の場合、労働者が「労働組合の組合員であること」「労働組合を結成し、これに加入すること」、あるいは「労働組合の正当な行為をしたこと」を理由として、使用者は労働者に対して解雇などの差別待遇(不利益取扱い)をしてはならないとしている。2号では、正当な理由なく使用者が労働者の代表者と団体交渉を拒否することを禁止している。さらに、3号では、さまざまな方法で労働組合の結成や運営に支配介入すること、労働組合の運営に対して経費援助をすることを禁止している。ただし、禁止される経費援助は、それによって労働組合が使用者の支配を受けることになる場合のことであって、あらゆる経費援助が禁止されるわけではない。

[村下 博・吉田美喜夫]

不当労働行為の救済

使用者による不当労働行為が行われた場合、その救済方法として次の二つがある。一つは、裁判所による司法的救済であり、もう一つは、労働委員会による準司法的救済である。日本ではこれら双方の利用が可能である。しかし、簡易・迅速に不当労働行為からの救済を図るという不当労働行為制度の趣旨からして、準司法的救済の利用がふさわしいが、労働委員会の命令の効力を裁判所で争うことができるので、実際には迅速な救済ができないという問題がある。救済の基本的な考え方には、使用者の不当労働行為に刑事上の制裁を加える直罰主義と、不当労働行為の発生した以前の状態に戻す(たとえば解雇された場合の原職復帰)という原状回復主義の二つがあり、旧労働組合法(1945)では直罰主義を採用していたが、現行労働組合法では原状回復主義を採用している。

 不当労働行為が行われた場合、労働者あるいは労働組合は労働委員会に申立てを行い、救済を求めることができる。申立てがあると、労働委員会は公益委員が調査・審問を行い、不当労働行為が成立する場合には救済命令を、成立しない場合には棄却命令を発することになる。救済命令としては、(1)原職復帰、バック・ペイ(賃金遡及(そきゅう)払い)などの原状回復命令、(2)団体交渉応諾命令、(3)支配・介入中止命令、(4)不当労働行為に対する謝罪文の掲示(ポスト・ノーティス)をさせる命令などがある。不当労働行為事件の調査、審問、命令発布などの手続については労働組合法第27条が定めている。

[村下 博・吉田美喜夫]

『中山和久著『不当労働行為論』(1981・一粒社)』『片岡曻・萬井隆令・西谷敏編『労使紛争と法』(1995・有斐閣)』『小宮文人著「不当労働行為の認定基準」(『講座21世紀の労働法第8巻 利益代表システムと団結権』所収・2000・有斐閣)』『道幸哲也著『不当労働行為法理の基本構造』(2002・北海道大学図書刊行会)』『中央労働委員会事務局編『不当労働行為事件命令集』各年版(労委協会)』

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百科事典マイペディア 「不当労働行為」の意味・わかりやすい解説

不当労働行為【ふとうろうどうこうい】

使用者が労働者の団結権を侵害する行為。日本の労働組合法は,憲法第28条の労働者団結権保障の精神に基づいて使用者の不利益取扱い黄犬契約・団体交渉拒否・支配介入・報復的差別待遇を不当労働行為として禁止している。不当労働行為に対しては,労働者または労働組合は,労働委員会への救済申立,または裁判所への提訴によって対抗する方法がある。不当労働行為禁止制度は1935年米国のワグナー法により最初に立法化された。
→関連項目解雇企業犯罪緊急命令公益委員御用組合争議行為タフト=ハートリー法団体交渉権ロックアウト和解

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不当労働行為」の意味・わかりやすい解説

不当労働行為
ふとうろうどうこうい

使用者が労働組合活動に対して行う違法な侵害行為。労働組合法 7条は (1) 組合加入や組合活動を理由とする不利益取扱いと黄犬契約,(2) 団体交渉拒否,(3) 支配介入と経費援助,(4) 労働委員会における労働者の発言などを理由とする不利益取扱い,の4種の行為を不当労働行為として列挙している。申立に基づき労働委員会が救済命令を発する行政的救済のほか,裁判所による司法的救済の方法もある。なおアメリカでは使用者と並んで労働組合の不当労働行為も定めているが,日本では採用されていない。

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人材マネジメント用語集 「不当労働行為」の解説

不当労働行為

・unfair labor practice
・労働組合や労働者が行う活動や行動に対して使用者側が行う妨害行為や不当な扱いを言う。

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世界大百科事典(旧版)内の不当労働行為の言及

【労働委員会】より

…労使紛争の調整と不当労働行為の審査・救済を主目的とする独立行政委員会。行政委員会という形態は,労使関係につき専門的知識・経験を有する委員が,適切かつ柔軟な事件処理をするために採用されたといわれる。…

【ワグナー法】より

…NIRAが違憲判決(1935)をうけたのち,それに代わるものとして全国労働関係法National Labor Relations Act,通称ワグナー法(提案者ワグナーRobert F.Wagner(1877‐1953)に由来する)が成立した。ワグナー法は組合の交渉力を法的に強化し,労使交渉力の均衡をはかる目的で,経営者側に〈不当労働行為〉の規定をもうけた。不当労働行為には,御用組合の援助,組合員の差別待遇,団体交渉拒否,労働者に保障された権利行使の妨害などが含まれている。…

※「不当労働行為」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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