箱根掘貫(読み)はこねほりぬき

日本歴史地名大系 「箱根掘貫」の解説

箱根掘貫
はこねほりぬき

箱根用水ともいう。芦ノ湖西岸にそびえる箱根古期外輪山系の湖尻こじり(駿河戸峠)山裾掘抜き、駿河深良ふから(現静岡県裾野市)に芦ノ湖の水を引水し、深良村ほか二九ヵ村の水田約五三〇町余を灌漑して黄瀬きせ川に注ぐ用水。掘貫の長さ一千三五〇メートル。

掘貫計画の当初の事情は明らかではないが、寛文三年(一六六三)二月一三日に工事の元締である江戸浅草あさくさの町人友野与右衛門らは、箱根権現に「今度湖切貫、新田企所願成就、如意満足祈所、右為祈祷領新田之内ニ、二百石之所永代御神領可令奉納者也」(箱根神社文書)という願文を差出しており、この頃にはすでに計画ができていたのであろう。工事計画はあまり進展せず、疏水工事咄控(箱根神社旧蔵)によると、権現別当快長の奔走にもかかわらず寺社奉行の許可が下りず、箱根には江戸逗留中の快長が与右衛門とともに入牢したとの風聞さえ伝わった。同六年別当聖政の時にようやく許可が下り、友野らは同年四月一三日に駿河御厨みくりや代官所に宛て工事の仕様書ならびに開削後の資金回収法の約定書を差出し、さらに五月一七日に工事の仕様書、開削後の修復に関して詳しく記述した証文を代官野村彦太夫の意見書を添えて幕府勘定所に差出し、開削許可を得た。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の箱根掘貫の言及

【箱根用水】より

…箱根の芦ノ湖の水を駿河国(静岡県)駿東郡に引水した灌漑用水。はじめ箱根掘貫,のちに深良(ふから)用水と呼ぶ。江戸町人友野与右衛門らが駿東郡深良村名主大庭源之丞とともに湖水を利用した新田開発を企て,1666年(寛文6)小田原藩と幕府の沼津代官所に出願,70年に完成した。…

※「箱根掘貫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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