改訂新版 世界大百科事典 「篩分け」の意味・わかりやすい解説
篩分け (ふるいわけ)
screening
ふるいによる粉粒体の分離操作。ふるい分けは工業的には多くの場合連続操作として行われている。ふるい分け作業の成績は処理量(または処理能力),分離の効率および分離の精度という三つの見地から評価される。ふるい分け成績に対しては原料の粒度構成その他の粉体物性,湿分などの原料側の特性と,ふるい面の形状,材質,ふるい機の操作条件などの装置側の諸条件が関係している。
連続式ふるい分け装置の処理能力Cは1時間当りの原料処理トン数によって表される。経験則によれば,この処理能力Cはふるい面の面積Aおよびふるい面の目開きaにほぼ比例し,次式で表される。
C=kAa
したがって,比例定数kは概略的に処理能力を評価するための装置定数と考えられる。kはふつうt/h・m2・mmの単位で表される。
ふるい分け効率およびふるい分け精度を厳密に評価するためには,ふるい分けによる分離の基準粒度を定義する必要がある。ふるい分け効率を評価するための分離の基準粒度としては,平衡粒度daが用いられる。図1の曲線aのような粒度の分布をもつ粉粒体をふるい分けて,曲線bに示す粒度の分布をもつ網下産物を分離・回収したとする。曲線aから曲線bを差し引いた残りcが網上産物の粒度の分布を表している。かりに分離が完全であったならば,曲線bはPQR,曲線cはSQRのようになるはずであり,MおよびNの部分の面積は,それぞれ不完全な分離による粒子の迷い込み(誤入物ともいう)の量を表している。これら二つの誤入物の量は分離の基準と想定した粒度の,RQの横軸座標値によって変化する。またRQを横軸に沿って平行移動したとき,双方の誤入物量,すなわちMとNの面積が相等しくなったときのRQの横軸座標値daを平衡粒度と定義する。図2はふるい分けの結果を表す粒度分布曲線である。曲線a,b,cはそれぞれ原料(フィード),網下産物および網上産物の粒度分布,すなわち横軸で示される粒度における通過分(その粒度よりも小さい粒子の重量パーセント)を表している。また水平線dは原料F(図2の右端の表示参照)に対する網下産物Uおよび網上産物Oの割合を表している。平衡粒度daはこの水平線と曲線aの交点Pの横軸座標値に等しい。ふるい分け効率を表示する場合,この平衡粒度を分離の基準とみなすと合理的であることが知られている。
もっとも簡便な分離効果の指標としては通過分実収率がある。図2の粒度分布曲線図を用いれば,平衡粒度に対する通過分実収率は線分ANの長さ,すなわち点Nの縦軸座標値として求められる。より公平なふるい分け効果の判定指標はふるい分け効率である。ふるい分け効率ηは網下産物中の通過分(基準粒度よりも細かい粒子)の回収率(図2のAN)から網下産物に迷い込んだ残分(基準粒度よりも粗い粒子)の回収率(図2のAM)を差し引いた値,すなわち図2の線分MNに対応する縦軸座標の長さとして求められる。
ふるい分け精度の評価における分離の基準粒度としては分離粒度が用いられる。分離粒度d50は網下・網上両産物に回収される確率が相等しくなる粒度として定義され,図1の曲線bおよびcの交点の横軸座標値に等しい。ふるい分け産物の粒度分布を測定し,測定粒度区間ごとの原料の網上産物への配分率を求めると階段状の図形が得られる。これを平滑化することによって描かれるS字形の曲線をトロンプ配分率曲線Tromp's partition curveまたは部分回収率曲線と呼ぶ。この曲線が配分率50%の水平線と交わる点の横軸座標値が分離粒度d50である。トロンプ配分率曲線の傾斜は分離精度を評価するための指標として役だつ。またそればかりでなく,トロンプ配分率曲線の形状自体も,ふるい分け操作の技術的問題点の解明に有益な示唆を与えるものである。
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報