金網またはそれに類する多数の穴をもつ板により,粉粒体を粒子径の大小にしたがって分離するのに使われる器具または機械装置。ふるいは穀物の選別や砂と砂利の分別などに人類の歴史とともに古くから使われてきた道具である。ふるいはほぼ同じ大きさと形の多数の穴をもつ面(ふるい面)と,これを支持する枠(ふるい枠)から成る。ふるい面はステンレス鋼,炭素鋼,ナイロンなどを素線とする織網,くさび形の断面をもつ針金(ウェッジワイヤ)や金属棒(ウェッジバー)を一定の間隔ですだれのように並べたもの,円形,長方形などの穴を多数あけた金属板,ゴムで被覆した鋼板,細い切れ目(スリット)をもつポリウレタン成形体などによって形成される。ふるい面における網目や穴の大きさ(目開き)が,ふるいの使用目的に応じてもっとも重要であることはいうまでもないが,ふるい面の面積に対する全網目面積の比率(開口比),穴の形状,ふるい面の凹凸,ふるい面の材質なども,ふるい面に与えられる運動とともに,ふるい分け作業に対して大きな影響を与える要因である(図1)。
ふるいには,家庭での調理や園芸などに使われる手作業用の簡単なものから,工業用の大型のふるい機に至るまで,多くの種類があるが,工業用のふるい機は固定式,回転式および振動式に大別される。
固定式のふるいとしては,木枠に金網を張り,35~45度くらいの傾斜にしたものを,砂をふるい分けるための道具として建築現場などでみかける。また,ウェッジバーやレール材などを,20~40cmほどの間隔で,35~45度くらいの傾斜角をもってほぼ平行に並べただけのふるいはグリズリgrizzlyと呼ばれ,選鉱工場や砕石工場における原鉱の受入れなどに広く使われている。また目開き0.1~1mmほどのウェッジワイヤによるふるい面を円弧状に成形し,接線方向に供給されるパルプをふるい分ける弧状ふるい(図2)は簡単な構造にもかかわらず優れた性能のふるい機で,選炭工場における微粉炭のふるい分け,バレイショデンプン製造工程などに使われている。この装置はオランダ国営炭鉱Dutch State Minesの研究所で開発されたため,その名にちなんでDSM screenとも呼ばれ,また原名のシーブベンドsieve bendなどの名でも知られている。
回転式のふるいは回転ふるいrotary screenまたはトロンメルTrommelsiebと呼ばれる。回転ふるいは水平面に対し8~20度程度傾斜した回転軸を中心に回転する,円筒形または六角筒形などの中空回転体をふるい面とするふるい機である。また回転軸を傾斜させることによってふるい面に傾斜を与える代りに,回転軸は水平とし,ふるい面を円錐形または角錐形としたものもある。原料は筒の内側に供給され,筒の回転によって転がされながら傾斜面を下降する間に細かい粒子がふるい面を通過し,分離される。回転ふるいは構造が簡単で,容易に製作できるばかりでなく,条件によってはふるい分け作業の効率もかなりよいため,コンクリート骨材のふるい分けなどに多く使われている。
ふるい面を振動させる方式のふるい(広義の振動ふるい)は,現在の工業用ふるい機として最も広く使われているものである。広義の振動ふるいは比較的大きな振幅と低い振動周波数をもつものと,比較的小さな振幅と高い振動周波数をもつものとに大別される。前者はしばしばシェーキングスクリーンshaking screenと呼ばれ,後者は狭義の振動ふるいvibrating screenと呼ばれる。シェーキングスクリーンは農業用のふるいから発達し,現在も主として食品工業や薬品工業などの軽工業分野で使われているのに対し,後者は鉱業を基盤に発達し,現在も鉱業を含む重工業分野で広く使われている。シェーキングスクリーンにおけるふるい面の運動は,ふるい面に対して垂直な方向の成分をあまり含まないため,粒子はふるい面の上を滑りながらふるい分けられるのに対し,狭義の振動ふるいにおける振動は,一般にふるい面に対して垂直の運動成分を含んでいるため,粒子はふるい面と衝突をくり返すうちにふるい分けられる,という点でふるい分け機構を異にしている。このため,シェーキングスクリーンの方は摩耗性の低い低比重粒子のふるい分けや研磨材のように粒度をとくによくそろえる必要のある製品の製造工程に適しているのに対し,狭義の振動ふるいはふるい面を摩耗させやすい物質や高比重粒子の大量ふるい分けに適しているといえる。
振動ふるいの種類はひじょうに多いので,ここでは代表的ないくつかの機種について,構造と動作原理を示す。(1)ジャイレートリースクリーンGyratory screen ユニバーサルジョイントによって支持された水平な円形のふるい面を数段積層し,下部のクランク軸によってほぼ水平な円形軌跡を描く旋回運動をふるい面に与えることによって,ふるい分けを行う(図3)。旋回運動の全振幅(振動のピークからピークまでの距離,すなわち振幅の2倍。ストロークともいう)は64~120mm,振動周波数は150~260rpm程度となっている。この種のふるい機にはふるい面が正方形や長方形のものなど,若干,構造を異にするものもある。(2)ローテックススクリーンRo-Tex screen わずかに傾斜したふるい面をもつシェーキングスクリーンで,ふるい面の運動軌跡が原料供給側では円に近く,網上産物排出側では直線に近いことを特徴とする。全振幅は50~90mm,振動周波数は200~300rpm程度である。円運動はふるい面の全幅への原料の分散に効果があり,直線往復運動はふるい分け効果に有利である。
狭義の振動ふるいとしては,次に示すいくつかの機種が最も広く使われている。(3)ローヘッドスクリーンLow-Head screenその名の示すようにふるい面を水平に設置することを特徴とする振動ふるいで,振動機構としては反対方向に同期回転する2組の不平衡おもりが使われている。これらの不平衡おもりが発生する遠心力は回転のある位相では互いに強め合い,ある位相では打ち消し合う結果,全体としては直線往復振動力が生ずる。これによってふるい面には水平面に対して45度前後傾いた方向の直線往復振動が加えられる。振動の全振幅は8~15mm,周波数は850~1200rpm,遠心係数(重力加速度に対する振動加速度の比)は3~4.5程度である。ふるい枠はばねとワイヤロープを使って懸垂するか,床上にばねを介して設置する。(4)リプルフロースクリーンRipl-Flo screen,タイロックスクリーンTy-Rock screenそれぞれ不平衡おもりを兼ねた回転駆動軸および偏心した回転駆動軸をもつ振動ふるいで,いずれもほぼ円に近い軌跡をもつ振動をふるい面に与えることにより,ふるい分けを行う。全振幅は6~18mm,周波数は800~1200rpm,遠心係数は3~5,ふるい面の傾斜は15~30度程度である。(5)共振ふるいresonance screen ばねと質量の組合せによる機械的共振現象を応用した振動ふるいで,一般の振動ふるいに比較して動力効率が高く,また大型機の製作が容易であることを特徴とする。図4はその動作原理を模式的に示したもので,振動系は網や荷(ふるい分ける原料)などを含むふるい枠の質量m1,台枠の質量m2,作動ばねk1,支持ばねk2,防振ばねk3,駆動ばねk4より構成される。クランク軸より駆動ばねk4を介して系に振動が加えられると,作動ばねk1の伸縮運動により質量m1およびm2が互いに180度の位相差をもって直線往復運動を行う。支持ばねk2は柔らかい板ばねで,振動方向を規制するが,防振ばねと同様,共振への寄与は小さい。作動ばねk1には変位と反力との間に直線関係が成り立たない非線形ばねが用いられ,共振ピークによる不安定動作を防止している。
ふるい面を多重化することによって,なん回か網目を通過した粒子のみを網下産物とするようになっているふるいは,多重ふるいまたは確率ふるいと呼ばれることがある。この種のふるいはスウェーデンのモーゲンセンF.Mogensenによって考案・開発されたモーゲンセンサイザーMogensen sizerによって代表される。このふるいの特徴は先に述べた弧状ふるいと同様,ふるい分け粒度が網の目開きの約1/2程度と小さいことにある。
執筆者:井上 外志雄
民間では穀物や粉などの精粗を選別したり塵芥(じんかい)をとりのぞくためにふるいが使われてきた。ふるいは曲物製の外枠の底に金網を張ったものが多いが,そのほか,竹,麻苧(あさお),絹,藤づる,馬の尾を張ったものもあり,用途に応じて種々のものが用いられる。スイノ,コオロシ,ケンド,ユリ,トオシなどの方言があり,網目の粗いのをトオシ,細かいのをフルイといって区別する所もある。ふるいの代りに,箕(み)やざるを上下にゆすって風選することも行われたが,従来の選別作業は江戸中期に導入された唐箕(とうみ)や千石どおしによって高い能率をあげることになった。
ふるいはざる,籠,箕などと同様に,背がのびなくなる,できものができるなどといって,ふだん頭にかぶることが禁じられている。これらの道具類には,網目や格子状に組まれた竹などの間から外が見通せるという共通点がある。このため,これをかぶれば異界が見通せ,さらにこの世のものでなくなると信じられたのである。このようなふるいの性質は,昔話の〈隠れ簑〉で,男が竹筒やふるいを目にあて遠くが見えるといって天狗の隠れ簑をだましとると語られたり,子どもが神隠しにあったときに,ふるいをかぶって子どもの名を呼べば出てくるとか,子どもを捜すときに,ふるいを首にかけて行き,その網目からのぞくと子どもが見えるなどという伝承にもみることができる。四国の一部では田植の晩の夕飯をふるいにのせてえびす様に供えたり,長野県で脱穀終了祝であるコバシアゲに,大きなきな粉餅3個をふるいに入れ,蔵の米俵の上に供える風習もある。
江戸時代には,地方によってはふるいも,ほうき,竹籠,箕,筬(おさ),簑などの竹細工・わら細工と同様に,傀儡(くぐつ),山窩(さんか)などと呼ばれる人々が作って売り歩いたものらしい。これもふるいが神聖視される一因であろう。ふるいが一般の家庭であまり使われなくなった今日でも,選別することを〈ふるいにかける〉ということばだけは残っている。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
穀物、粉、砂など顆粒(かりゅう)状のものを、その大きさの精粗によってえり分ける道具。その形状は、浅い円形・方形で、普通、曲物(まげもの)・木枠(わく)の底に、馬毛・針金・竹・籐(とう)などの網、または絹・麻などの布帛(ふはく)を張る。これを使用する際は、この網または布帛の上に穀物などの選別すべき顆粒をのせて振り、網目を通過するものと、しないものとに分ける。網目の粗いものをトオシ(籭)、細かいものをフルイとよぶ。このほか、工業用としては、機械化された回転篩、振動篩などがある。粒度測定の目的で使われる標準篩には日本工業規格(JIS(ジス))の規格がある。なお、篩の目の大きさは、普通、メッシュの単位で表示される。篩は穀物の精選に必要な農具だったので、地方によっては、コオロシ、スイノ、ユル、ケンドなどとよばれ、昔は篩屋の職人が村々を回り、求めに応じて篩をつくり、修繕した。民俗としては、神隠しにあった子供を捜すのに篩を首にかけ、網目からのぞくと子供が見えるといわれるなど、種々の儀礼にも用いられた。
[宮本瑞夫]
…東西文明交流の成果として,互いに影響し合って,発達していったと考えるのが妥当であろう。小麦製粉にとって,ロータリーカーンと切っても切れない関係にある篩(ふるい)は,絹織物の紗であり,その基本をなす綟(もじ)り織の技術は,ヨーロッパ,とくにスイスに定着して現存するが,元来は秦・漢時代の中国で発達したものであることを考え合わせてみることは興味深い。 ロータリーカーンの技術に関する東西交流について,もうひとつ注目すべき事実がある。…
※「篩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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