流行歌および映画の題名。歌の成立は1922年(大正11)で、千野かおるほか2名の作詞、鳥取春陽(とっとりしゅんよう)作曲とされている。しかし赤沢大助(だいすけ)の告訴もあって、著作権の帰属は明確さを欠く。とにかくこの曲の流行を決定づけたのは、帝国キネマ製作の映画『籠の鳥』(松本英一監督)である。24年8月に封切られた大阪・芦辺(あしべ)劇場は5週間、東京・遊楽館は4週間の続映となり、後編の好評とも相まって、女優歌川八重子は一躍スターダムにのし上がった。しかし、退廃的な曲調が「国民精神作興ニ関スル詔書」(1923年11月発布)の主旨にもとるため、映画館内で観客の合唱が禁じられたり、歌そのものを禁止したりする動きもあった。
[倉田喜弘]
…それらは従来の新派とあまり変わらなかったが,観客に受けて,その延長で流行歌《枯すすき》をとり入れた(無声映画だったので,歌詞が字幕に出て,弁士あるいは歌手が歌ったといわれる)岩田祐吉・栗島すみ子主演《船頭小唄》(1923。池田義信監督)がつくられて大ヒットし,〈小唄映画〉が各社で量産されることとなり,なかでも帝キネの《籠の鳥》(1924。松本英一監督)は大当りして,主演の沢蘭子を人気スターにした。…
※「籠の鳥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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