告訴(読み)こくそ(英語表記)Strafantrag

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

告訴
こくそ
Strafantrag

犯罪の被害者その他一定の者 (刑事訴訟法 231~234) が,捜査機関 (検察官司法警察員) に対し犯罪事実を申告し,その訴追を求める意思表示をいう。書面のほか,口頭でこれを行うこともできる (241条) 。告訴は,一般に捜査の端緒の一つとなるとともに,特に親告罪については,その存在は訴訟条件でもある。それゆえ,親告罪の告訴については,犯人を知った日から6ヵ月以内という期間の制限が設けられている (235条) 。司法警察員が告訴を受けた場合には,書類,証拠物を検察官に送付する義務を負い (242条) ,また検察官は,起訴,不起訴の処分をしたときはその旨を告訴人に通知し (260条) ,告訴人の請求があるときは不起訴の理由を告知することを要する (261条) 。告訴人が検察官のした不起訴の処分に不服があるときは,検察審査会に対し審査の申立てをし (検察審査会法 30) ,また特に職権濫用罪などの事件については,裁判所に付審判の請求をすることができる (刑事訴訟法 262) 。 (→告発 )

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百科事典マイペディアの解説

告訴【こくそ】

犯罪の被害者やその配偶者・親族など(告訴権者)が捜査機関に対して犯罪事実を申告し,犯人の捜査および訴追を求めること(刑事訴訟法230条以下)。書面または口頭で検察官または司法警察員にする。告訴がなければ裁判できない罪もあるが(親告罪),通常の場合には,告訴は捜査開始の端緒にすぎない。→告発
→関連項目虚偽告訴の罪示談司法警察職員

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とっさの日本語便利帳の解説

告訴

日本では司法の場に訴え出ること。中国ではごく普通に、告げる、伝えるの

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世界大百科事典 第2版の解説

こくそ【告訴】

犯罪の被害者その他一定の者(被害者の法定代理人など)が,捜査機関にその事実を申告し,犯人の処罰を求める意思を表示すること。犯人の処罰を求める意思表示を伴う点で,単なる被害届と区別される。もっとも,犯人がだれであるか不特定のまま告訴をしても差し支えない。告訴は,告訴権者がみずから,またはその代理人により,書面または口頭で,検察官または司法警察員に対して行う。口頭の場合には調書が作られる。司法警察員が告訴を受けたときは,関係書類および証拠物をすみやかに検察官に送付する(刑事訴訟法230~242条)。

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大辞林 第三版の解説

こくそ【告訴】

( 名 ) スル
犯罪による被害者またはそれに準ずる者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示をすること。 → 告発

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

告訴
こくそ

犯罪の被害者等の告訴権者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示である。告訴権者は、犯罪の被害者、被害者の法定代理人、一定の場合に被害者の親族、被害者死亡のときは被害者の配偶者・直系親族・兄弟姉妹、また名誉毀損(きそん)罪につき被害者死亡のときは被害者の親族・子孫である(刑事訴訟法230条~233条)。告訴の方法は、書面または口頭により、検察官または司法警察員に対して行う(同法241条)。口頭のときは告訴調書が作成される。もっとも、実際には口頭による告訴は少ない。いわゆる民事事件が刑事事件の形をとって告訴されることを避けるために、告訴の受理は書面をもって慎重に行われる傾向があるからである。しかし、告訴状の作成を法律の素人(しろうと)である被害者に要求することが困難な場合には、口頭による告訴も受理すべきものとされている。
 告訴の効果として、これによって捜査が開始され、司法警察員は、告訴に関する書類・証拠物を速やかに検察官に送付する義務を負い(同法242条)、検察官は、起訴・不起訴の処分を告訴した者に通知する義務を負い(同法260条)、また、告訴した者から請求があるときは不起訴理由を告知する義務を負う(同法261条)ことになる。
 公訴の提起に告訴を必要とする犯罪を親告罪という。たとえば、名誉毀損罪・侮辱罪、秘密漏示罪、過失傷害罪、私用文書等毀棄罪・器物損壊罪、一定の略取誘拐罪、一定の親族間の窃盗罪等である。これらは、つねに告訴が訴訟条件となる絶対的親告罪(たとえば名誉毀損罪)と、一定の身分関係を前提とする相対的親告罪(たとえば親族間窃盗)とに分けられる。親告罪について告訴は訴訟条件であるから、有効な告訴がないのに検察官が公訴を提起した場合には、公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるときにあたり、公訴棄却の判決が下される(同法338条4号)。
 なお、性犯罪については、2017年(平成29)の刑法改正までは親告罪とされてきたが(旧刑法180条)、改正後は親告罪ではないこととされた。ここにいう性犯罪には、強制わいせつ罪、強制性交等罪(法改正前までの強姦(ごうかん)罪の名称が変更された)に加えて、法改正で新たに設けられた監護者わいせつ罪および監護者性交等罪等が含まれ、これらすべてが非親告罪となった。これまで性犯罪が親告罪とされてきたのは、性犯罪の処罰については被害者の意思を尊重し、そのプライバシーを保護する必要があると考えられたからである。しかし、性的被害によって精神的に多大な被害を受けた被害者にとって、告訴するか否かの選択を迫られていると感じられたり、告訴により被告人から報復を受けるのではないかとの不安を抱く場合があるなど、親告罪であることによりかえって被害者に精神的負担を生じさせていることが少なくないと認識され、これを非親告罪化することで被害者の精神的負担を解消することが相当であるとされたのである。もっとも、法改正の趣旨が被害者の精神的負担の軽減にあるのであるから、非親告罪とされた後においても、捜査の実施や検察官の処分決定において被害者の心情に適切な配慮がなされるべきことは当然である。
 親告罪の告訴については告訴手続に特則がある。すなわち、親告罪については、犯人を知った日から6か月以内に告訴をしなければならないという告訴期間の制限がある(刑事訴訟法235条)。これに対して非親告罪については告訴期間の制限はないので、公訴時効が完成するまでは告訴をすることができる。その他、親告罪の告訴については、告訴人が数人あるときは、告訴期間はそれぞれ独立して進行し(同法236条)、また、告訴の取消しは公訴提起までとされ(同法237条1項)、公訴が提起されればもはや告訴の取消しはできない。さらに、親告罪については告訴不可分の原則があり、親告罪について共犯の1人または数人に対してした告訴または告訴の取消しは、他の共犯に対してもその効力を生じる(同法238条)。これを告訴の主観的不可分という。また犯罪事実の一部に対してした告訴または告訴の取消しは、その全部について効力を生じる。これを告訴の客観的不可分という。処分上の一罪の各部分が被害者を異にするときは、被害者の1人がした告訴の効力は他の被害者に関する事実に及ばないと解される。なお、告訴は刑事事件に固有の観念であり、民事事件については私人が裁判所に訴えを提起することができるので、民事には告訴の観念はない。[内田一郎・田口守一]

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