米国産牛肉輸入問題(読み)べいこくさんぎゅうにくゆにゅうもんだい

知恵蔵 「米国産牛肉輸入問題」の解説

米国産牛肉輸入問題

2003年末にBSE(牛海綿状脳症)感染牛の発見により輸入禁止となっていた米国牛肉は05年12月に輸入が再開されたものの、わずか1カ月後に特定危険部位(SRM)の脊柱(せきちゅう)混入が見つかったため再度輸入が停止された。この措置に対して、日米両政府が協議を続けた結果、06年6月21日に日本政府による輸出認定施設(35カ所)の事前査察、輸入牛肉の全箱検査などを条件として輸入再開が合意された。07年1月下旬には再開後の検証期間とした半年が経過し、日本政府は再査察の実施を求めたがようやく合意に達したのは4月下旬のことだった。6月13日には輸入業者の負担で行っていた全箱調査を終了し、同月27、28日には輸入条件緩和をめぐる技術的会合が開かれた。焦点は生後20カ月以下でSRMの除去という現行輸入条件を緩和するかどうかに移った。米国政府は、5月の国際獣疫局(OIE)総会で米国のBSEステータス評価が月齢30カ月未満であればSRMを除去しなくても輸出できる「管理されたリスク」国に移行したことで強く条件緩和を求めている。しかし、07年に限っても牛タン混載や月齢証明のない牛肉の混入などの輸入条件違反が後を絶たないし、米国ではまだBSEの感染源と目されている肉骨粉を豚や鶏の飼料に利用し、牛との交差汚染の危険性がぬぐえないうえに、OIEが牛肉貿易基準を緩和する傾向にあるなど、消費者の懸念払拭(ふっしょく)するには至っていない。

(池上甲一 近畿大学農学部教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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