動物の感染症(伝染病)を防ぎ、根絶を目的とする国際機関。2003年にWorld Organisation for Animal Healthを通称とすることを決めたが、通常、フランス語の正式名称の頭文字をとった略称OIEが用いられる。また、通称の略称であるWOAHも使われる。「動物のWHO(世界保健機関)」ともいわれる。1920年代の世界的な牛疫の流行を機に、1924年、加盟28か国で発足し、2023年3月時点で182か国・地域が加盟している。日本は1930年(昭和5)に加盟した。本部はパリにあり、アメリカ、アフリカ、アジア・太平洋、東ヨーロッパ、中東の五つの地域代表事務所が設置されている。口蹄疫(こうていえき)、高病原性鳥インフルエンザなどの感染症の指定、世界の発生状況の監視、関連情報の世界への発信を行い、感染症の制圧・根絶に向けた衛生基準づくりや技術的支援に取り組む。年1回の総会で決めた貿易基準(Code)と疾病診断基準(Manual)は世界貿易機関(WTO)の安全基準になる。とくに社会や経済に大きな被害をもたらす口蹄疫、牛海綿状脳症(BSE)、牛肺疫およびアフリカ馬疫については、発生状況や安全対策などを調査し、国・地域ごとに「清浄国」と「非清浄国」の分類を行う。また高病原性鳥インフルエンザ、狂犬病などが発生した場合の届け出を義務づけている。感染症の防止だけでなく、食品安全や動物福祉にも取り組み、対象とする動物は哺乳類、鳥類、蜂(はち)、魚類、甲殻類、軟体動物などで、2008年からは両生類が加わった。
BSEに対しては、原因である異常タンパク質「プリオン」がたまりやすい脳、眼球、脊髄、腸などを特定危険部位と定め、除去するよう求めている。国・地域ごとの分類では、BSEの「リスクを無視できる国」「リスクを管理している国」「不明の国」の3段階に分類、日本は2013年(平成25)5月にもっとも安全な「リスクを無視できる国」に認定された。これを受け、日本国内の全自治体が実施していたウシの全頭検査は2013年6月末をもって廃止された。口蹄疫については、「ワクチン非接種清浄国」「ワクチン接種清浄国」「非清浄国」の三つに分類、日本はワクチン接種清浄国であるが、感染が疑われる家畜が確認された2000年と2010年には非清浄国に分類され、日本からの牛肉輸入を禁止した国・地域があった。
[編集部]
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