日本大百科全書(ニッポニカ) 「精神測定法」の意味・わかりやすい解説
精神測定法
せいしんそくていほう
psychometric method
生活体の行動とその決定因との関係を明らかにすることが心理学の目的であり、その決定因の重要なものとして刺激がある。しかし、この刺激Sと生活体の反応Rとの関係は複雑なので、一義的な関数関係としてとらえにくい。そこで、刺激と反応との関係の中間に、生活体の状態に関するさまざまな媒介変数I(心理学的概念)を入れて、S‐I‐Rの間の関係(精神測定関数)から生活体の行動を理解することが考えられ、これらのS、I、Rの値を測定する方法が精神測定法である。なお、Iは直接には測定ができないので、SとRとの関係から間接的に心理学的概念の尺度(心理尺度)が推定される。
精神測定法には、主として感覚知覚に関する精神物理学的測定法(極限法、恒常法、調整法)、知能、性格など各種の心理検査法や社会的態度、嗜好(しこう)の数量化を扱う尺度構成法(サーストンThurstoneの判定法、ガットマンGuttmanの尺度分析法、リッカートLikertの評定加算法)がある。精神測定には多種多様な尺度が用いられるが、数学的演算がどの程度可能かという数の性質によって、4種の尺度が分類される。名義尺度、順位尺度、間隔尺度、比率尺度で、いずれも一次元尺度である。このほか、必要に応じて新たに尺度を構成して用いてもよい。最近では、対象のいくつかの側面について、同時的に測定を行う多次元尺度も用いられている。
[今井省吾]