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数理心理学 すうりしんりがくmathematical psychology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

数理心理学
すうりしんりがく
mathematical psychology

心理学的現象を数理モデルによって表現し,数学的方法により問題解決を試みる心理学の一分野。 19世紀における G.フェヒナー精神物理学や F.ゴルトンの個人差心理学の伝統を受けて,1920年代後半頃から L.L.サーストンや C.E.スピアマンらによる精神測定学 (→精神測定法 ) が盛んになり,感覚,知覚,知能,性格など心理学的概念の数量化が実験心理学不可欠な条件となった。また,C.L.ハルの仮説演繹的な学習理論に端を発し,心理学的な諸過程の確率論的あるいは決定論的モデル構成が中心的課題となり,50年代に入って数理心理学の用語が定着した。今日では,情報理論サイバネティクスゲームの理論などの研究を受け,記憶,思考,社会心理そのほかあらゆる領域にさまざまな数理的研究が急速に起っており,またコンピュータの普及は複雑な精神過程のシミュレーションという新しい分野を開拓している。

数理心理学
すうりしんりがく
Mathematical Psychics

F.Y.エッジワース著。 1881年刊。功利主義の倫理学を経済生活に応用し,数式化することを目指して書かれたこの書物は,エッジワースの博学を反映してギリシア語の引用を含む風変りな本であるが,現代の経済学に及ぼした影響は多大なものである。無差別曲線契約曲線,コアの概念につながる考え方など今日のミクロ理論の基礎概念を提供している。特にコアの理論は,ドブリュースカーフらによって,エッジワースの極限定理と現代的に定式化された。そのゲーム論的視点は,複数の主体の間の財の交換問題を主体間の結託として取扱い,さらに主体が増加するにつれどんな結託によっても排除されない配分が競争均衡に近づくことを示唆するものであった。このような個別の主体間の取引を明示的に分析する視点は,W.S.ジェボンズ交換理論の分析視点に由来するもので,イギリス限界革命期の特徴として今日見直されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

数理心理学
すうりしんりがく
mathematical psychology

数理的方法を用いて研究を行う心理学の一分野。心理学は、E・H・ウェーバーやフェヒナーの感覚の研究以来、エビングハウスの忘却の研究、サーストンの学習の研究、ハルの学習の研究、レビンのトポロジー心理学などのように、数学的概念や方法を用いてきた。その後もサイバネティックスや情報理論の刺激を受け、またコンピュータ技術の進歩により、各種の実験によって得られた数量化されたデータを統計的に処理するだけでなく、数理モデルを構成して現象の予測や検証に利用するようになっている。
 スティーブンスの感覚尺度に関する精神物理学的研究、ノイマンに始まるゲーム理論、コンピュータ・シミュレーションの考え方はその例であり、これらは、感覚や思考や言語の領域だけでなく、産業や政治などの社会的行動にも関係する学際的な研究の基礎的な領域となっている。[宇津木保]
『J・G・グリーノ著、岡本栄一・藤田恵璽訳・編『数理心理学の展開』(1976・誠信書房)』

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