紅葉(読み)モミジ

デジタル大辞泉 「紅葉」の意味・読み・例文・類語

もみじ〔もみぢ〕【紅葉/黄葉】

[名](スル)《動詞「もみ(紅葉)ず」の連用形から。上代は「もみち」》
晩秋に草木の葉が赤や黄色に色づくこと。また、その葉。こうよう。「美しく―した山」 秋》「山くれて―のあけをうばひけり/蕪村
カエデの別名。また、その葉。
かさねの色目の名。表は紅、裏は青。一説に、表は赤、裏は濃い赤とも。もみじがさね。
紋所の名。カエデの葉を図案化したもの。
鹿の肉。鹿には紅葉が取り合わせであるところからいう。
[類語]紅葉こうよう黄葉木の葉枝葉草葉葉っぱ押し葉葉身葉脈葉柄葉末托葉単葉複葉葉序双葉若葉若緑新緑万緑青葉照り葉落ち葉落葉枯れ葉朽ち葉病葉わくらば松葉

こう‐よう〔‐エフ〕【紅葉】

[名](スル)秋になって葉が紅色に変わること。また、その葉。葉緑素がなくなり、アントシアンなどの色素が蓄積して起こる。黄葉褐葉を含めていうこともある。もみじ。「全山みごとに紅葉する」 秋》「―の色きはまりて風を絶つ/宋淵」
[類語]黄葉紅葉もみじ木の葉枝葉草葉葉っぱ押し葉葉身葉脈葉柄葉末托葉単葉複葉葉序双葉若葉若緑新緑万緑青葉照り葉落ち葉落葉枯れ葉朽ち葉病葉わくらば松葉

もみじ‐ば〔もみぢ‐〕【紅葉/黄葉】

《上代は「もみちば」》紅または黄に色づいた木の葉。もみじ。 秋》

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精選版 日本国語大辞典 「紅葉」の意味・読み・例文・類語

もみじもみぢ【紅葉・黄葉・&JISEB80;】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「もみず(紅葉)」の連用形の名詞化。古くは「もみち」 )
  2. ( ━する ) 秋に、草木の葉が赤や黄に変わること。紅葉(こうよう)すること。また、その葉。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「秋山の毛美知(モミチ)をかざしわが居れば浦潮満ち来いまだ飽かなくに」(出典:万葉集(8C後)一五・三七〇七)
  3. (かえで)、または楓の葉をいう。
    1. [初出の実例]「紅葉を愛するは蝦手(かへて)を最とす、故に特に紅葉(モミチ)の名を擅にす」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉三)
  4. 紋所の名。楓を図柄としたもの。丸に紅葉、杏葉紅葉など。
    1. 丸に紅葉@杏葉紅葉
      丸に紅葉@杏葉紅葉
  5. もみじがさね(紅葉襲)」の略。
    1. [初出の実例]「五節のをり著たりしきなるより紅までにほひたりし紅葉どもに」(出典:讚岐典侍(1108頃)下)
  6. 恥ずかしさや怒りのために顔が赤くなることのたとえ。→もみじを散らす
    1. [初出の実例]「くっと気をあげ、時ならぬ紅葉(モミヂ)面にあらはし」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
  7. 花札で一〇月を表わす札。紅葉に鹿の図柄の一〇点札、紅葉に短冊の五点札と、一点札二枚がある。
  8. 料理で、秋の紅葉した木の葉の色を表わしたものにいう語。
  9. 鹿の肉。鹿には紅葉が取り合わせであるところからいう。また、猪(いのしし)の肉をいうこともある。
    1. [初出の実例]「さればさ、もみぢのすいものをくっているおりすけをみるようでござる」(出典:洒落本・蚊不喰呪咀曾我(1779))
    2. 「猪鹿の肉を〈略〉牡丹紅葉など呼ぶ事とはなりぬ」(出典:随筆・皇都午睡(1850)三)
  10. 俗に、牛肉をいう。
    1. [初出の実例]「丸万のおごりで、久しぶりにモミジ(牛肉)にありついた」(出典:いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉一)
  11. 小麦の挽きかす。ふすま。もと、女房詞。また、大坂でいった語。〔男重宝記(元祿六年)(1693)〕
  12. 茄子(なすび)をいう女房詞。〔女中詞(元祿五年)(1692)〕
  13. 茶を立てるときに、「紅葉」を音読した「こうよう」を「濃う善う」に通わせていうしゃれ。
    1. [初出の実例]「お茶をもみぢにたてよ〈略〉ただこうようにといふ事なり」(出典:咄本・醒睡笑(1628)五)
  14. 魚の鰭(ひれ)の部分の名。背鰭の中央あたりをいう。
  15. (かこい)女郎の異称。
    1. [初出の実例]「鹿古伊は六字とも唱ふ、もみじとも云よし」(出典:浪花聞書(頭注)(1819頃))
  16. もみじがさ(紅葉笠)」の略。
    1. [初出の実例]「傘。蛇の目は賤し。紅葉のしら張、爪折したてがよし」(出典:洒落本・当世風俗通(1773)極上之息子風)
  17. もみじぶくろ(紅葉袋)」の略。
    1. [初出の実例]「彌三良もみぢをとほしとほしうり」(出典:雑俳・川柳評万句合‐安永四(1775)仁五)

こう‐よう‥エフ【紅葉】

  1. 〘 名詞 〙 植物の緑葉が秋に紅色に変わる現象。また、その紅色になった葉。葉にできるアントシアンなどの色素が、離層の形成によって移動を妨げられ蓄積して起こると考えられる。紅葉と黄葉が同じ葉に生じることもあり、秋季以外にも色素が一時的に蓄積して紅葉することもある。紅葉化。もみじ。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「文峯(ぶんほう)に轡を案ず白駒の景(かげ)、詞海に舟を艤(よそ)ふ紅葉の声〈大江以言〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)上)
    2. 「楓(もみぢ)は既に紅葉したのも有り、まだしないのも有る」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
    3. [その他の文献]〔白居易‐送王十八帰山寄題仙遊寺詩〕

もみじ‐ばもみぢ‥【紅葉・黄葉】

  1. [ 1 ] ( 古くは「もみちば」 ) 秋の末、紅、または黄色に色づいた草木の葉。特に、紅葉(こうよう)した楓(かえで)の葉。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「あしひきの山した光る毛美知葉(モミチば)の散りの乱(まが)ひは今日にもあるかも」(出典:万葉集(8C後)一五・三七〇〇)
  2. [ 2 ] ( 歌い出しが「紅葉ば」であるところからいう ) 長唄。「高尾懺悔(たかおさんげ)」の一部分を独立させて、初心者用の入門曲にしたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紅葉」の意味・わかりやすい解説

紅葉
こうよう

一般的には、植物の葉が秋に、落葉に先だって赤に変わることをいう。また、葉が黄色や黄褐色になることを黄葉(こうよう)というが、これらをあわせて「もみじ」という。この現象はかならずしも秋の落葉の時期にのみみられるものではなく、幼葉が一時的に赤色になり、葉の成長とともに消失する場合、葉の全成長期を通して赤色になる場合、秋の落葉直前にだけ紅色を呈する場合の3通りがある。いずれの場合も、葉の中にアントシアン色素が形成されることによっておこる現象で、色素の組成は単純で、植物の種類に関係なく大部分はシアニジンであり、しかもそのほとんどのものが3位にグルコースがついたクリサンテミンで、他のアントシアニンはごくまれにみいだされる程度である。早春に若葉が美しく紅葉する植物はイタドリヤマザクラナンテンカナメモチなどであるが、葉の成長とともに紅色は消失する。これは、まだクロロフィルの生成が十分でない若葉の中で、茎から転流してきた糖からアントシアンがつくられるためで、伸び出してきたばかりの若葉を紫外線から保護する役割をしているといわれる。事実、アントシアンを含む組織は表皮に限られており、葉の成熟とともにアントシアンは分解消失して緑化してくる。

 葉の成長の全期間を通じて紅色を呈する植物は少なく、アカキャベツ、ベゴニア、アカジソなどがある。これらの植物は正常の緑色種からの変種が多く、赤色であるからといって光合成が行われないわけではなく、共存するクロロフィルによって正常の光合成を営んでいる。アカザやケイトウの葉の赤い色素はアントシアンではなく、ベタレイン色素によるものである。

 秋に紅葉する植物にはイロハモミジ、ハゼ、コマユミなどのムクロジ科カエデ科)、ツツジ科、ウルシ科ニシキギ科、バラ科、ブドウ科などに属する植物が多く、鮮やかな紅葉になる。とくに日本では気候や地形の関係から紅葉が美しい。紅葉が鮮やかに発現するには、温度、水分、光などの環境が密接に関係し、昼夜の寒暖の差が大きいこと、適度の湿度があること、紫外線が強いことなどが必要である。日本でも日光、奥入瀬(おいらせ)、箱根など山間部の渓流の近くで紅葉が美しいのは、そのためである。しかし、これらの条件のほかにも、葉柄の基部に離層が形成されて、転流が妨げられることやクロロフィルの分解速度、葉の中の糖含量などが影響するので、美しい紅葉になる条件は単純ではない。紅葉は、初めは葉の中肋(ちゅうろく)からもっとも離れた部分から始まり、やがて葉身全面に及ぶ。また、ニシキギツリバナではアントシアンは表皮細胞にだけ形成されるが、このような例はまれで、多くの場合は葉肉組織だけに含まれることが多く、木本植物の60%以上が葉肉組織にみいだされ、草本植物では葉肉細胞と表皮細胞の両方に含まれることが多い。紅葉が枯死するときに褐色になるのは、混在する色素フロバフェンのためである。ヒノキやスギなどの裸子植物の紅葉の色素はカロチノイドで、ルテインやビオラキサンチンの黄色色素に加えて、桃紅色色素のロドキサンチンが新たにつくられてくるためである。

 秋の落葉前に黄葉する植物にはイチョウ、ハルニレ、ポプラ、シナノキ、スズカケノキなどがある。これはカロチノイドによる発色で、葉が老化して葉の中に含まれるクロロフィルが分解するにつれて、共存するカロチノイドの色が現れてくるためで、新しい色素の合成がおこるわけではない。黄葉に含まれるカロチノイドは、ルテインやビオラキサンチンなどのキサントフィル類が主体で、カロチン類はほとんど存在しない。常緑樹では春の終わりに新しい葉が出ると古い葉が黄葉して落葉することがみられるが、この場合も秋の黄葉と同じ過程をとるものと考えられる。秋に葉が褐色となる植物にケヤキ、クヌギ、ブナ、コナラ、クリなどがあるが、これは葉の中に含まれる無色のカテキン類が葉の老化に伴って酸化重合して褐色のフロバフェンに変わったためである。褐葉の初期には黄色のカロチノイドが共存しているために、変化に富んだ美しい色彩になる。

[吉田精一 2020年9月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「紅葉」の意味・わかりやすい解説

紅葉 (こうよう)
colouring of autumn leaves

秋になって樹木の葉が落葉前に紅色や黄色に変色する現象。色が現れる過程はいろいろあるが,代表的なものは黄葉化と紅葉化である。黄葉化の場合には,落葉前に葉緑体のクロロフィルが分解されて葉の緑が消えるため,残された有色体中のカロチノイドの色が現れて黄色になる(イチョウなど)。この場合,秋になって黄色の色素がつくられるのではなくて,もともと植物体内にあったけれども優勢な緑色に負けて見えていなかったものが,緑色が消えたために目に見えるようになるのである。一方,紅葉化の場合には,葉柄基部に離層ができ,糖類が移動できなくなって葉に蓄積され,そうしてたまった糖やアミノ酸からアントシアンやフラボンの酸化物などが液胞中につくられて紅色となる。この紅の色調は,糖類の量が多くて強い陽光にさらされると鮮やかとなる(カエデ類など)。クロロフィルの分解で黄色が表に出る現象と,アントシアンなどの物質がつくられて紅色になる現象が,同じ葉で同時に進行して生じる紅葉もある。

 紅葉は温帯で顕著に現れるもので,熱帯のように常緑樹を主とした地域にはみられない。落葉に先だつ秋の紅葉とは別に,カエデやカナメモチなどでは,春の初めの芽生えが赤い葉になる。これも液胞中にアントシアンなどの色素がつくられるためであるが,若葉を紫外線から守ったり,赤外線を吸収して温度を高め,代謝を盛んにするなどといった説明がなされている。
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百科事典マイペディア 「紅葉」の意味・わかりやすい解説

紅葉【こうよう】

気候の変化のため,葉中に生理的反応が起こって,緑葉が赤,黄,褐色に変わること。カエデ科などで著しい。これは秋,気温の低下につれ離層ができ,物質の移動が困難となって糖類が蓄積され,アントシアンなどの色素が形成されるため。また落葉前,葉緑体が分解され,緑色が消えるために黄色を呈するものを黄葉というが,紅葉と同時に起こることが多い。なお春の芽ばえ時にも過度の紫外線をさえぎるため紅葉するものがある。
→関連項目落葉

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紅葉」の意味・わかりやすい解説

紅葉
こうよう
red colouring of leaves

秋になって葉の色が紅色に変る現象。イチョウの黄葉なども,発現の基本機構は同じ。その原因について,一般的には,一種のホルモン (離層ホルモン) の作用で葉柄の基部に離層が形成され,糖類などの養分の移動が妨げられて葉中に蓄積されることなどの結果,酵素の働きが変り,色素の生成に異変が起ることが原因と考えられている。紅葉の色の原因は,おもにアントシアンやフラボン系の色素である。落葉の前にクロロフィルが分解し,黄色のカロテノイド色素が残るような場合には黄葉となる。

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デジタル大辞泉プラス 「紅葉」の解説

紅葉(もみじ)

日本の唱歌の題名。作詞:高野辰之、作曲:岡野貞一。発表年は1911年。2007年、文化庁と日本PTA全国協議会により「日本の歌百選」に選定された。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「紅葉」の解説

紅葉 (モミジ)

植物。カエデ科カエデ属の落葉高木または低木の総称。カエデの別称

紅葉 (モミジ)

植物。カエデ科の落葉高木。タカオモミジの別称

紅葉 (モミジ)

植物。キク科の多年草。モミジガサの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の紅葉の言及

【落葉】より

…カエデのように,明らかに外因によって落葉が生じるものもあるが,種によっては内因によって支配されているものもあるらしいことがこれらの事実から推定されるが,具体的な事実関係が明らかにされているわけではない。落葉前に葉が紅色や黄色になる現象を紅葉とか黄葉というが,これは葉緑体の分解によって緑が消えることによるが,場合によってはアントシアニンの増加がみられて色彩が鮮やかになることもある。【岩槻 邦男】。…

※「紅葉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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