素麵(読み)そうめん

改訂新版 世界大百科事典 「素麵」の意味・わかりやすい解説

素麵 (そうめん)

めん類の一種。古くは索麵(さくめん)といい,音便で〈さうめん(そうめん)〉。小麦粉を食塩水で練って太めのひも状に切り,その表面にまんべんなく綿実油を塗って細く長くのばし翌朝まで熟成させる。これを2本の棒を用いて絹糸のように細くのばし,天日乾燥したのち切断する。丸2日の工程を要するもので,極細の手延べそうめんの場合,1kgの粉が2km以上の長さになる。良質のコムギを産し,気象条件が戸外乾燥に適する地方では,農家の冬季の副業として生産されてきた。1645年(正保2)刊の《毛吹草》には,山城の〈大徳寺蒸素麪〉,大和の〈三輪素麪〉をはじめ,伊勢,武蔵の久我(こが),越前丸岡,能登和嶋(わじま),備前岡山,長門長府,伊予松山など諸国の名物そうめんがあげられている。いまは宮城県白石(しろいし)のうーめん,富山県砺波(となみ)の大門(おおかど)そうめん,三重県四日市の三重の糸,兵庫県竜野の揖保(いぼ)乃糸,奈良県桜井の三輪そうめん,徳島県の半田そうめん,香川県小豆島の島の光,愛媛県松山の五色(ごしき)そうめん,および,長崎県西有家(にしありえ)の須川そうめんなどが有名で,昔ながらの手延べそうめんが珍重される。寒中に製造されたのを倉庫にねかせ,梅雨どきの〈やく〉を過ぎてから出荷される。色つやがよく弾力性のあるものが良品である。たっぷりの熱湯でゆで,さし水は1回だけ。冷水さらし,冷めてからもみ洗いしてざるに上げ,つけ汁で食べる。これが冷やしそうめん(冷やそうめん)で,流しそうめんと呼ぶのは,樋状の装置を設けてこれを流し,それをすくい上げて食べさせるものをいう。薬味には,おろしショウガ,刻みネギのほか,青ジソ,ミョウガ,練ガラシなどが用いられる。ほかに淡口(うすくち)しょうゆ仕立ての汁で煮込む煮麵(にゆうめん)があり,また大皿にタイを薄味に煮たのとそうめんを盛り合わせた鯛麵(たいめん)は瀬戸内地方では祝儀に欠かせぬ料理である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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