主として日本に産する植物のなかで、香り、辛味、ほろ苦味の強い葉、若芽、つぼみ、種子、果実、根茎から得られ、少量で料理の風味を引き立て、食欲増進、消化吸収に役だつものをいう。日本料理に使われている薬味は、いわゆる和風香辛料で、アサの実、サンショウの実や若芽、ショウガ、シソの実や葉、セリ、タデ、陳皮(ちんぴ)、トウガラシ、ニラ、ネギ、フキノトウ、ボウフウ、ミツバ、ミョウガ、ユズ、ワサビ、ワケギ、アサツキ、カボス、スダチ、ダイコン、七味唐辛子などがあり、しょうゆ、みそ、酢、みりんなどの調味料にもよくあうものが多い。「薬味」ということばが最初に使われたのは、中国の宋(そう)代ではないかといわれている。大根をそばに付け合わせて食することが宋末元(げん)初の随筆『癸辛雑識(きしんざっしき)』に書かれており、また日本でも1686年(貞享3)に出た『諸芸小鑑(しょげいこかがみ)』のなかに、「麺(めん)類を食べて中毒にかからぬよう大根を食べよ」とある。すなわち食べすぎによる腹痛(中毒)を防ぐ薬の役目を果たすものが大根であって、このころから薬味ということばが使われ始めたともいわれている。薬味はまた、役にたつ味という意味で役味とよばれたこともあったようである。古来、薬草として使われていたものは、苦味や辛味、香りが強く、それだけを食物として大量に食べることができないものであり、しかも調理には不要な根、皮、葉、茎、へた、種子、花などを用いたものが多い。漢方医の薬味だんすに収められていた漢方処方の成分と同じものであったことから、薬味とよばれるようになったとの説もある。
[齋藤 浩]
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