細菌肥料(読み)さいきんひりょう(その他表記)bacterial fertilizer

改訂新版 世界大百科事典 「細菌肥料」の意味・わかりやすい解説

細菌肥料 (さいきんひりょう)
bacterial fertilizer

土壌中に存在する微生物のなかには植物生育に有用な働きをするものがある。このような有益な微生物を純粋に培養して増やし,肥料のように土に施用したり,種子に付着させるものをいう。微生物肥料ともいう。代表的な例として,マメ科作物の根粒菌がある。このバクテリアダイズなどのマメ科植物の根内に共生して空気中の窒素を固定してアンモニアにかえ,植物が利用できるようにしている菌であり,ダイズなどの種子にまぶして利用する。このために優良な根粒菌を選別して培養して増やし,これを配布する事業が世界各地で行われている。ロシアではこのような肥料をニトラギンと呼ぶ。

 根粒菌以外の微生物の利用は今のところあまり実用化されていないが,次のようなものが有望なものとして検討されている。(1)アゾトバクターを利用したもの この微生物は根粒菌のように根内に共生はしないが,空中窒素を固定し,植物に窒素を供給できると考えられる。ロシアではアゾトバクテリンと称し,利用されている。(2)土壌中の有機リン酸化合物を分解して植物の利用できるリン酸塩にする微生物(Bacillus megaterium var.phosphaticumなど)を利用したもの ロシアではホスホロバクテリンと称している。(3)菌根ミコリザ) 樹木や多くの植物の根に菌(カビ一種)が寄生し根が根粒のように太くなる。この菌根は土壌中のリン酸を植物に吸収できる形にかえて供給している。

 以上が主要なものであるが,根粒菌以外には広く実用化されるまでにはなかなか至らない。ロシアや東ヨーロッパで研究が盛んである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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