日本大百科全書(ニッポニカ) 「経営者革命」の意味・わかりやすい解説
経営者革命
けいえいしゃかくめい
managerial revolution
アメリカの政治哲学者バーナムJ. Burnhamが、現代社会の支配を論じた著作『経営者革命』(1941)のなかで用いた概念。資本家が支配する資本主義社会は、諸種の矛盾から崩壊するが、そのあとにくるのは、マルクス主義者が主張しているような労働者が支配権を握る社会主義社会ではなく、専門経営者が支配権を握る経営者社会であり、世界は現にその方向へ動いているというのが、バーナムの主張の骨子である。彼によれば、所有と経営の分離により、所有に基づく支配(資本家支配)は後退し、それにかわって、複雑巨大化した生産手段を現実に運営し、そこから生まれる成果の分配に指導力をもつ者が支配権を握る。労働者は、このような条件を欠くために支配者になることができず、このような条件を備えた専門家である経営者こそが真の支配者になる。この場合の経営者には、企業経営者はもとより、経済官僚のような専門家も含まれている点に注意を要する。彼は、このような経営者社会が、当時の資本主義国、ナチス・ドイツ、ソ連のすべてに出現しつつあるとした。以上のような経営者革命論に対して支持の動きがみられたが、論理矛盾、現実離れなどの批判もある。
[森本三男]
『J・バーナム著、武山泰雄訳『経営者革命』(1965・東洋経済新報社)』