化学辞典 第2版 「結晶構造解析」の解説
結晶構造解析
ケッショウコウゾウカイセキ
crystal structure analysis
X線,中性子線,または電子線の回折を利用して,結晶内の原子配列,熱振動,電子密度分布などを決めること.このうち,X線解析は物質の構造決定にもっとも有力な方法の一つとして広く用いられているので,その概略を述べる.普通は,単結晶(大きさは0.5 mm 角以下)のX線反射をワイセンベルクのX線カメラ,プリセッションカメラなどで撮影するか,またはX線回折計で記録し,反射角度から単位格子の大きさと形を,ラウエ対称と規則的消滅から空間群を決定する.結晶を構成する原子は空間群対称に従って配列しているが,独立な原子については,単位格子内の位置,温度因子などの構造パラメーターを決めなければならない.多くの場合,重原子法,同形置換法,直接法などで,各反射の位相の近似値を求めて,フーリエ合成法によって電子密度分布を計算し,大略の構造を知る.逐次フーリエ法(または差合成法),続いて最小2乗法によって,構造因子の計算値と実測値の一致をよくするように構造パラメーターを調節する(精密化).精密化の進みぐあいはR因子の減少で見当をつける.得られた構造パラメーターの標準偏差は構造因子の偶然誤差から計算される.普通の有機化合物の結晶構造解析で求められる原子間距離の標準偏差は,多くの場合0.001 nm 以下になる.なお,X線の異常分散を利用して光学活性体の絶対配置を決めることもできる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報