(読み)ほころびる

精選版 日本国語大辞典 「綻」の意味・読み・例文・類語

ほころ・びる【綻】

〘自バ上一〙 ほころ・ぶ 〘自バ上二〙
① 縫いめがとける。衣服などの縫いめの糸がはち切れる。ほどける。
落窪(10C後)二「唐衣きて見る事の嬉しさをつつめば袖ぞほころびぬべき」
② 衣服などの布の合わせめの一部を縫い残して仕立てる。
狭衣物語(1069‐77頃か)二「一重の御衣(ぞ)もいたくほころびてあらはに」
③ 蕾(つぼみ)がひらき始める。花が咲きかける。
古今(905‐914)春上・二六「あをやぎの糸よりかくる春しもぞみだれて花のほころびにける〈紀貫之〉」
④ 隠していた気持事柄が隠しきれずに外に出る。
源氏(1001‐14頃)若菜上「いかならむ折にか、その御心ばへほころぶべからむと」
⑤ おかしさや、楽しさをこらえきれずに外に出す。にこにこと笑いだす。また、かたい表情をくずす。
※源氏(1001‐14頃)乙女「人々みなほころびて笑ひぬれば」
⑥ うきうきした気持を抑えきれずに鳥などが鳴く。楽しげにさえずる。
※源氏(1001‐14頃)梅枝「かすみだに月と花とをへだてずはねぐらの鳥もほころびなまし」
⑦ かたくなっていた気持がほぐれる。うちとける。
※談義本・根無草(1763‐69)前「是より少しほころびて、彼男舟さし寄」

ほころび【綻】

〘名〙 (動詞「ほころびる(綻)」の連用形名詞化)
① ほころびること。縫い合わせた部分の糸が切れること。縫いめがほどけること。また、その部分。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「ほころび縫はんだにぞもたらぬ」
② 衣服や几帳(きちょう)などの、合わせめの一部をわざと縫い合わせないでおく部分。
※落窪(10C後)一「木丁のほころびより臥しながら見給へば」
③ 隠していた物事が隠しきれずに外に出ること。

ほころば・す【綻】

〘他サ四〙
① ほころびるようにする。ほころびさせる。
山家集(12C後)下「大方の秋をば月につつませて吹きほころばす風の音かな」
② 間を透かす。衣服などをゆるめて下のものが見えるようにする。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「えび染めの袖を、俄にひきほころばしたるに」

ほころ・ぶ【綻】

[1] 〘自バ五(四)〙 =ほころびる(綻)
順集(983頃)「千種にもほころぶ花の錦かないづら青柳ぬひし糸すぢ」
[2] 〘自バ上二〙 ⇒ほころびる(綻)

ふくろ・ぶ【綻】

〘自バ上二〙 (「ほころぶ(綻)」の変化した語) 縫い目などが解ける。ほころびる。ふくろべる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
浮世草子男色大鑑(1687)七「無理ばきの革足袋、ふくろぶるを用捨なく」

ふくろび【綻】

〘名〙 (動詞「ふくろぶ(綻)」の連用形の名詞化) 縫い目などの解けること。また、その箇所。ふくろべ。
※両足院本山谷抄(1500頃)二「女房も無ほどにふくろひ縫てくるる者もなく」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「綻」の意味・読み・例文・類語

たん【綻】[漢字項目]

常用漢字] [音]タン(漢) [訓]ほころびる
縫い目がほどける。破れる。「破綻

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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