几帳(読み)キチョウ

デジタル大辞泉 「几帳」の意味・読み・例文・類語

き‐ちょう〔‐チヤウ〕【×几帳】

寝殿造りの室内調度で、間仕切り目隠しに使う屏障具へいしょうぐの一。土居つちいという台の上に2本の柱を立てて横木をわたし、それに夏は生絹すずし、冬は練絹ねりぎぬなどの帷子かたびらをかけたもの。高さは5尺と4尺とがある。

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精選版 日本国語大辞典 「几帳」の意味・読み・例文・類語

き‐ちょう‥チャウ【几帳】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「几(おしまずき)に懸けた帳(とばり)」の意 ) 寝殿造の調度とする移動用障屏具の一種。台の上に二本の柱を立てその柱の上に一本の横木を渡し、その横木に布帛を縦矧(たてはぎ)にした帳をかけたもの。高さ四尺(約一・二メートル)の柱には五幅(いつの)の几帳、三尺(約〇・九メートル)の柱には四幅(よの)の几帳を例とし、幅の中央には、それぞれ幅筋(のすじ)という紐を垂らす。小形のものに枕几帳差几帳の類がある。
    1. 几帳〈源氏物語絵巻〉
      几帳〈源氏物語絵巻〉
    2. [初出の実例]「初斎院装束〈略〉几帳六基」(出典:延喜式(927)五)
    3. 「姫君はちいさききちゃうひきよせて、そひふし給へり」(出典:苔の衣(1271頃)一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「几帳」の意味・わかりやすい解説

几帳
きちょう

公家(くげ)調度で屏障具(へいしょうぐ)の一種。T形の几に帷(かたびら)とよぶ帳をかけて垂らし、目隠しや風よけ、あるいは間仕切りとして用いた。几は黒漆塗りで、土居(つちい)とよぶ台に2本の棒を立て、手とよぶ横棒を支える。手と支えの棒の先端に飾り金具をはめ、土居の上場、支えの棒を差し込む孔(あな)に飾りの座金(ざがね)を打つ。この几に蒔絵(まきえ)を施した華麗なものもある。4尺(約120センチメートル)の几帳と3尺の几帳の2種がある。前者は手から土居の上場まで4尺の几に、五幅(いつの)で、それぞれ幅の中央に野筋(のすじ)とよぶ絎(く)け紐(ひも)をつけて垂らし、上部に白左右撚(よ)りの紐を差し通し、芯棒(しんぼう)を差し入れ、各幅上部に釣り紐をつける。後者は四幅(よの)で同様に仕立てられる。

 地質は、冬が練(ねり)、夏が生(き)で、表地に白平絹(ひらぎぬ)か白綾(しらあや)、裏地に白平絹、野筋地に濃紅か黒の平絹を用いる。『雅亮(まさすけ)装束抄』によると、野筋の中央を境にして赤と濃き紅の2色をはぎ合わせたものを用いる。美麗几帳といわれるものは、表地に華やかな二陪(ふたえ)織物や、裾濃(すそご)といって下部を濃く、しだいに上へ薄くして上部を白に絣(かすり)の技法と同様に締め切って緂(だん)とした織物や、刺しゅうを施した帷を用いた。夏の美麗几帳には生織(きお)りの綾、または平絹に秋草模様を描いた帷をかけた。

[高田倭男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「几帳」の意味・わかりやすい解説

几帳
きちょう

平安時代に起った障屏具の一つ。貴人の座側に立て,あるいは簾 (すだれ) の面に沿って置いて,室内の仕切りや装飾に用いた。方形の台 (土居〈つちい〉) に2本の柱 (足) を立て,その上に横木 (手) を載せて帳 (帷〈とばり,かたびら〉) を垂らす。台,柱,横木などには黒漆や蒔絵などを施す。帳の長さは普通 2mほどで五幅 (いつの) を綴じ合せてある。帳は冬は練り絹,夏は生絹 (すずし) や綾織などを用い,特に錦,綾などを用いたものを美麗の几帳という。各幅ごとに風帯 (野筋ともいう長い紐) をつけ,幅の中間には物見があけられている。幅の上端には木端 (こはし) を縫いくるんで,横木に結びつけてある。現在では,宮中や神社の祭祀行事の際などにみられる。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「几帳」の解説

きちょう【几帳】

布で作った衝立(ついた)て。平安時代の寝殿造りで、風や視線をさえぎると同時に、装飾としても用いられた。土居(つちい)という台に、高さ1mくらいのT字形の木を立て、絹を数枚縫い合わせたもの(帳(とばり))をかけたもの。季節や行事などに合わせ、用いる色や模様が決められていた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「几帳」の解説

几帳
きちょう

屋内を仕切るために用いる調度の一つ。土居という台に2本の足を立てて,その上に横木をのせ,この横木から帳として布帷(かたびら)を垂らして,視線や風をさえぎるようにしたもの。高さによって,3尺几帳と4尺几帳がある。御簾(みす)の遮蔽性を高めるために,その内側に立てても利用された。平安時代の住宅でよく用いられた屏障具(へいしょうぐ)。

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百科事典マイペディア 「几帳」の意味・わかりやすい解説

几帳【きちょう】

平安時代に考案された室内調度の一つで,風や視線をさえぎり,かつ装飾とするもの。四角の土居(つちい)と呼ぶ台に,高さ3,4尺のT字形の木を立て,これに帳(とばり)をかけた。帳はふつう四,五幅で幅ごとに絹で平縫のひもをたらした。帳は季節・吉凶等により,色彩や文様にきまりがあった。なお貴婦人が外出時に顔を隠す差几帳もあった。

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改訂新版 世界大百科事典 「几帳」の意味・わかりやすい解説

几帳 (きちょう)

(ちょう)

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世界大百科事典(旧版)内の几帳の言及

【帳】より

…壁代(かべしろ),引帷(ひきもの),几帳(きちよう),斗帳(とちよう),軟障(ぜじよう),幌(とばり)など室内で屛障用に用いられる帷(かたびら)の総称。〈とばり〉ともよむ。…

※「几帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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