社会的、道徳的に非難されるべきことを犯したという意識ないしは感情。こうした意識・感情がおきると自尊心を失い、罪滅ぼしをしようという気持ちがおきる。自分を無価値なものとみなす傾向のことをもいう。このときの罪悪感は意識的なものであり、社会的道徳を維持していく力にもなっている。精神分析では、神経症的な無意識の罪悪感が注目され、罰を求める要求が仮定される。一般には非難されるべきことを犯したという意識から罪悪感が生じるが、むしろ罪悪感がゆえに罪を犯すというように考えざるをえない病理的ケースがみられるからである。こうしたタイプの犯罪者は、無意識の空想的犯罪からおこる罪悪感から逃れるために現実に罪を犯し、その罪悪感を甘受する。現実に処罰されることによって無意識の罪悪感を現実の罪悪感に置き換えることができるので、心理的には解放感を得ることができると考えられる。こうした罪悪感は多くの場合、自我と超自我の葛藤(かっとう)によるものが多く、罪悪感は超自我に対する自我の不安であるといわれる。すなわち、自我は超自我の命令に従うことができないと自ら罰を受けようとする。これが無意識の処罰欲求とよばれるものである。
[外林大作・川幡政道]
『フロイト著、小此木啓吾訳「自我とエス」(『フロイト著作集6』所収・1970・人文書院)』▽『フロイト著、佐々木雄二訳「精神分析的研究からみた二、三の性格類型」(『フロイト著作集6』所収・1970・人文書院)』▽『久重忠夫著『罪悪感の現象学――「受苦の倫理学」序説』(1988・弘文堂)』▽『松木邦裕著『分析臨床での発見――転移・解釈・罪悪感』(2002・岩崎学術出版社)』
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