精神分析学の用語。フロイトは、心的装置(人格構造)に、エスEs(ドイツ語、ラテン語でイドid)、自我、超自我という三つの領域を考えた。発生的にはエスから自我が生まれ、超自我は自我の一部として最終的に形成された領域である。その成立過程からみて、超自我は両親との権威性を内面化したものといわれており、両親の言動から感じ取った個人的・社会的価値の取り入れである。したがって、超自我はフロイトにとっては道徳性の根源であり、良心、罪悪感を代表し、他方、自我理想(理想自我はフロイトでは同じ意味)としての価値観を保持するものと考えた。機能的には、エスのいわゆる本能的衝動をある程度抑圧するための検閲を行う作用をもっている。
自我はフロイトの構想では、外界との接触をその機能としているが、現実を正しく認知するところにその主要な作用がある。他方、自我は外界に対して自己の意志を伝える作用もあり、外界に対し単純に受動的ではない。これに対して超自我は、自我理想という理想を与えて、自我の健全な活動を勇気づける役目をもっている。そのため、自我が外界との関係を正常に保持し、現実についての正確な認識を得ようとしても、エスからの本能的衝動の力が強くなり、また超自我の自我への要請が強力に作用すると、自我はその機能を十分に発揮できなくなり、その結果、病的症状(神経症)を引き起こすことになる。
[本明 寛]
フロイトの発達理論からみて、幼児が自由に欲望を表そうとするときに、両親から加えられる圧力(しつけ)をしだいに内面化して成立したものが超自我である。したがって、その後の幼稚園や学校の教師から加えられる圧力も、同じように取り入れられ、そこに良心が育つとみられる。それは、社会的順応行動の成立の根源と一般に考えられている。フロイトはこうした権威に基づく良心とは別に、人間個人の利益や権利の保全を主張する人間的良心を主張している。
自我の外界から受ける影響による現実主義的価値追求に対して、より高い価値を追求させようとする機能を超自我に求めるという傾向はフロイトに示唆(しさ)されているが、その後の研究ではこうした人間の積極的活動に注目したものが多くなっている。またフロイトは、幼児が両親との間に性的な感情を抱く時期(エディプス期)を仮説している。男子が母親に性的愛情をもち、一方父親を憎むという発達段階がそれであるが、他方には両親からともに愛されたいという強い願望があり、この心的葛藤(かっとう)状態から罪悪感が生まれ、超自我が形成されるとも解されている。
[本明 寛]
S.フロイトによって定義,使用された概念。彼は精神を空間的にとらえ,前期の理論では意識,前意識,無意識,後期の理論では超自我,自我,イド(エス)のそれぞれ三つの領域を区別した。超自我は自我に対して監視人,裁判官,指導者のような役割を果たす,いわば良心のようなものであるが,すぐれて無意識的である点で通常の良心と異なる。超自我は両親の禁止や命令を内在化したものであるが,現実の両親像ではなく,両親の超自我を内在化したもので,それを中心としてあとから教師などを介してさまざまな社会的規範がつけ加わる。このようにして超自我は世代から世代へと受け継がれ,社会の伝統的な規範や価値を伝えてゆくとされる。超自我は自我理想ego idealをその一面として含むこともあり,自我理想と区別されることもある。区別された場合は,超自我は主として禁止の側面を表し,それへの違反は罪悪感を生む。自我理想は到達すべき理想を表し,それに達しないと劣等感を生む。
執筆者:岸田 秀
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…覚醒生活において無意識が露呈しないことはむしろ健康の印だが,精神分裂病においては,自我が著しく脆弱(ぜいじやく)化して抑圧がゆるむためにこの無意識が露出してくる。 フロイトは後年,意識の三層説をさらに発展させ,〈エス(イド)〉〈自我〉〈超自我〉という局所論的・構造論的な心的装置論を提出した。エスは生まれたばかりの新生児の未組織の心の状態であり,時空間を知らぬ本能のるつぼであり,快楽原則によって支配されている。…
… 1904‐20年にかけては13の精神分析技法論を発表し,精神分析療法の基本理念を確立する。エス(イド),自我,超自我という三分割の心的装置論は,《集団心理学と自我の分析》(1921),《自我とエス》(1923)において展開され,自我の分析に比重が移っていく。《悲哀とメランコリー》(1917)と《制止・症状・不安》(1926)とは後期の臨床論文として重要である。…
※「超自我」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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