家庭医学館 の解説
ろうかにともなうはのびょうきとしょうじょう【老化にともなう歯の病気と症状】
お年寄りの歯の病気でもっとも問題になるのは、若い人と同様、むし歯(う蝕(しょく))と歯周病(ししゅうびょう)(歯槽膿漏(しそうのうろう))です。
しかし、歯と歯肉(しにく)(歯ぐき)は長い間使い込んだために、若い人とはその状態が異なりますので、そこにおこる病気のようすも少しちがってきます。
いずれも長年にわたる歯の手入れの悪さがひきおこす習慣病です。年をとれば、だんだん歯を失って入れ歯になるのはしかたがない、という考え方はまちがっています。正しい手入れを心がけるようにしましょう。
■歯周病(いわゆる歯槽膿漏)
年をとると、程度の差はありますが、ほとんどの人が歯周病になります。これは、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)に口腔内(こうくうない)に常在する細菌がすみつき(プラーク)、歯ぐきに炎症をおこすからです。
若い人であれば免疫反応(めんえきはんのう)も盛んで、炎症の範囲は歯ぐきにとどまっていますが、年をとると、深部の歯槽骨(しそうこつ)や歯根膜(しこんまく)などの歯を支える組織に広がり、歯がぐらぐらしたり歯根が見えるようになります。歯周病は痛みがほとんどない病気ですから、知らないうちに重症になってしまうことが多いのです。
歯ぐきが腫(は)れて出血したり、膿(うみ)が出たり、ひどい口臭がするのが歯周病の症状のすべてではありません。歯と歯の間や歯ぐきとの境目が少し赤くなったり、歯と歯の間に物がはさまるのも十分に歯周病のサインですから、注意してください。
重症になって歯を失うと、残りの歯の負担が大きくなり、歯周病はさらに進行を早めます。入れ歯のバネのかかっている歯も同様です。歯周病は誰でもかかる病気だということを忘れないでください(「歯周病(歯槽膿漏)」参照)。
■むし歯(う蝕)
歯周病になると、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなったり、歯根が露出することは前述しました。歯と歯の間もすき間があいてきますが、その歯根面や歯間部におこるのが、お年寄りのむし歯の特徴です。
また、以前治療した歯が再びむし歯になることもよくあります。歯周ポケットの中や金冠の中は見えないので、知らないうちに重症となり、痛みが出てはじめて気づくこともあります。
いちばん奥の歯は、入れ歯のバネがかかっていることが多いのですが、これも汚れやすく、見えないという点では同じです。神経(歯髄(しずい))のない歯でもむし歯になるので注意が必要です。年をとると入れ歯や、歯の抜けた部分があったり、歯根が露出したりして口腔内は複雑になり、若い人より歯の手入れはむずかしいと考えてください。
■摩耗(まもう)(磨耗)と知覚過敏
歯のみがき方が悪かったりその他の原因で、歯ぐきの近く(歯頸部(しけいぶ))がすり減ることがあります(摩耗症(まもうしょう)(磨耗症)(「摩耗症(磨耗症)」))。また、冷たい物がしみたり、歯ブラシがさわるとピリピリ痛んだりします(知覚過敏症(「知覚過敏症」))。