イギリスの詩人コールリッジの物語詩。1798年に刊行されたワーズワースとの共著『抒情民謡集』の巻頭を飾った。時は中世。眼光鋭い白髪の老人が婚礼客を引き留めて、身の上話を始めるという枠入り構造になっている。「私」が乗り込んだ船は嵐(あらし)に吹かれて南氷洋に至り、アホウドリのおかげで氷海を脱出するが、「私」はいわれなく鳥を殺してしまう。その呪(のろ)いで太平洋の赤道直下で船は静止し、仲間たちが死んでゆくなかで、「私」はひとり苦しむが、海蛇を祝福したとたん風が吹き始め、故郷に帰り着く。以後、老水夫は放浪の身となって、己の罪と罰と許しの物語を人に語らずにはいられない。特異な宇宙感覚、人間の実存的危機意識、夢魔的な言語操作などのゆえに、ロマン派文学の傑作とされる。
[高橋康也]
『斎藤勇・大和資雄訳『コウルリジ詩選』(岩波文庫)』
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