考工記(読み)こうこうき(その他表記)Kǎo gōng jì

改訂新版 世界大百科事典 「考工記」の意味・わかりやすい解説

考工記 (こうこうき)
Kǎo gōng jì

中国古代の礼書《周礼(しゆらい)》の篇名。工芸のことを述べる。前漢時代,《周礼》が人々に知られるようになったとき,《周礼》を構成する天・地・春・夏・秋・冬の六官のうち,冬官の司空の篇がすでに欠けていた。そこで司空の役目に相当する内容を,前世の工芸に詳しい者の記録によって補ったのがこの篇だとされる。清の江永の《周礼疑義挙例》によれば,この篇のもととなった記録は,その内容や語彙から見て,東周時代(春秋戦国時代)の斉国の人がまとめたもの。たとえば青銅器鋳造の際の銅と錫との比率を用途別に六つに区分するなど,礼数(すなわち礼の規定を等差級数的に段階づける)の観念による概念化があって,実際とはいささか外れる点もありはするが,中国古代の工芸技術を知るための基礎的な資料である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「考工記」の意味・わかりやすい解説

考工記
こうこうき

武器(戟(げき)・剣・弓・矢など)・車輿(しゃよ)・礼器・楽器・容器・宮器・城市などの構造・寸法規格・製作または建築の方法や、皮革加工・練糸・染色などの技法に関する中国の文献編者不詳。『周礼(しゅらい)』中の一篇(ぺん)として伝存する。前漢時代、秦(しん)の始皇帝以来の禁書令が解かれ、河漢献王劉徳(りゅうとく)(在位前155~前130)に民間から『周官』(『周礼』の原名)5篇が献じられたが、すでに第6篇「冬官」が欠けており、王は『考工記』でこれを補ったと伝えられ、もとは『周礼』とは別の独立した書物であった。内容・用語の考証や近年の考古学的発掘研究によれば、春秋時代後期の斉(せい)の国の人が記録したと推定され、先秦時代の手工業技術に関する貴重な資料である。

[宮島一彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「考工記」の意味・わかりやすい解説

考工記
こうこうき
Kao-gong ji

中国の経書周礼 (しゅらい) 』の一編で,中国最古の技術書。車,弓,矢その他の製作法について書いている。漢の武帝のとき,河間の献王が『周礼』を見出したが,冬官司空の部分が欠けていたので,『考工記』で補った。異説もあるが,戦国時代の斉の人の作と推定されている。

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世界大百科事典(旧版)内の考工記の言及

【技術史】より

…そこではエウパリノスEupalinos(前6世紀のギリシアの技術者)やアルキメデスや李冰(りひよう)や飛驒工(ひだのたくみ)などがあげられている。このような扱い方が支配的だった時代に,ウィトルウィウスの《建築十書》や大プリニウスの《博物誌》や中国の〈考工記〉が,メカニズムや材料を中心とした技術の扱いを示していることは注目に値する。 中世では伝統が重んじられていたので,新機軸よりも信頼性や洗練度が重視され,技術は芸術に近いものになった。…

※「考工記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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