肝臓薬(読み)かんぞうやく

改訂新版 世界大百科事典 「肝臓薬」の意味・わかりやすい解説

肝臓薬 (かんぞうやく)

ウイルス性肝炎,アルコール性肝炎,薬物中毒性肝障害などによる肝臓機能の低下または脂肪肝などに用いられる薬物を総称していう。おもな製剤として,還元グルタチオン製剤,チオプロニン製剤グリチルリチン製剤,プロトポルフィリン製剤,パントテン酸製剤,核酸前駆物質,パガミン酸製剤,ジメルカプロール,肝水解物製剤などが日本で市販されている。その作用機序から考えると,次のように分類される。(1)肝臓の再生能力を高めるもの 肝臓の再生能力を賦活化するためには,十分な量のグリコーゲンおよびタンパク質が必要であり,高タンパク高カロリー食が有効である。食欲不振時には,糖類およびアミノ酸の補給が有効である。このほか,核酸の前駆物質であるオロチン酸やビタミン類も有用である。(2)肝臓に有害な脂肪を除去するもの 肝臓に有害なものは脂肪であり,脂肪が10%以上病的に貯留されると,脂肪肝とか脂肪変性とかいわれる。肝臓中の脂質を流血中に追い出す因子を脂好性因子といい,この因子としてはコリンメチオニンイノシットがある。いずれも,脂肪をレシチンの形に乳化して血液中に流出させる。パントテン酸チオクト酸やパガミン酸も補酵素などになり脂肪酸の利用に役立っている。(3)肝臓の解毒機能に関するもの 肝臓のおもな役割は栄養素の代謝であるが,同時に有害な物質を無害な物質に変化させ排出しやすくする解毒機構を有する。解毒機構を活性化するものとして,グルタチオン,チオプロニンやグリチルリチンなどがこのグループに入る。(4)その他 肝臓の加水分解物質は,臓器加水分解物質で疾患を治療しようとする古くからある薬物療法に基づく製剤である。肝臓の再生促進作用と抗脂肝作用によるとされている。このほか,ステロイドホルモン,インターフェロンや免疫抑制剤はウイルス性肝炎に用いられ,さらに肝臓障害に付随する黄疸には利胆薬を用いる。また,日本で開発されたマロチレートは,RNA合成を介してタンパク質の合成を促進し,肝臓におけるコレステロール合成および脂肪酸酸化能の促進によって,強い肝臓障害抑制と脂肪肝改善効果を示す新しいタイプの薬である。安全性が高く,かつ肝臓障害治療に高い効果をもつので,国際的にも注目されている。
肝炎 →肝臓
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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