日本大百科全書(ニッポニカ) 「グルタチオン」の意味・わかりやすい解説
グルタチオン
ぐるたちおん
glutathione
生体内から取り出された最初の結晶性ペプチドで、動植物および微生物中に存在する主要な低分子チオール化合物。酵母、肝臓、筋肉などに多く含まれ、自然界に広く、かつ比較的大量に分布している。化学式はC10H17N3O6Sで、1921年にイギリスの生化学者ホプキンズによって酵母から単離され、グルタミン酸と硫黄(いおう)を含むところから命名された。さらに1929年ケンドルらによってグリシンなど3種のアミノ酸を含むトリペプチド、すなわちγ(ガンマ)-L-グルタミル-L-システイニル-グリシンであることが決定された。生体内では大部分が還元型で、酸化型はきわめて少ないが、酸化還元の機能に関係している。また、酵素グリオキサラーゼの補酵素として働き、カテプシンなどのSHタンパク分解酵素のSH基を保護するために役だつほか、グルタチオン抱合による解毒作用もある。
[降旗千恵]