肺アミロイドーシス
はいアミロイドーシス
Pulmonary amyloidosis
(呼吸器の病気)
アミロイドと呼ばれる特殊な蛋白が、全身のさまざまな臓器に沈着してくる病態です。病気が全身に起こることはオーシスといわれるので、アミロイドーシスといいます。
疾患の分類は、①アミロイドの沈着が全身性に起こっているか、一部臓器に限られているか、②原因不明であるか、基礎疾患に伴っているか、③アミロイド蛋白の種類はどんなものか(AL、AAなど)、によって行われます。
基礎疾患に伴って起こる場合の原因疾患としては、慢性炎症性疾患(関節リウマチ、結核など)や多発性骨髄腫、長期にわたる血液透析などが重要です。
呼吸器系で問題となるアミロイドはほとんどがALタイプで免疫グロブリンに由来するため、免疫グロブリンの過剰生産やクリアランス(排泄)の障害が、沈着と関連するものと推定されています。
肺のアミロイドーシスでは、病変が中枢気道にあると咳、喘鳴(ゼーゼーする)、呼吸困難がみられます。末梢の肺に単発で発症したものでは、症状がみられないのが普通です。
腎臓が侵されるとネフローゼ症候群、心臓に沈着した例では心不全や伝導障害、消化管に沈着すると食欲不振、腸の蠕動低下、吸収不全など、侵された臓器によってさまざまな症状が現れてきます。
アミロイドの有無は、直腸で粘膜を採取し、コンゴーレッド染色や偏光顕微鏡検査で確認します。
病状は数年にわたり徐々に進行します。本疾患での死因は腎不全や心不全です。内科的な治療法はありません。単発性の場合の予後は、悪くありません。
千田 金吾
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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「肺アミロイドーシス」の解説
はいあみろいどーしす【肺アミロイドーシス Pulmonary Amyloidosis】
[どんな病気か]
アミロイドーシスとは、アミロイドたんぱくと呼ばれる線維構造をもった特異なたんぱく質が、からだのいろいろな臓器に沈着して、機能障害をおこすことをいいます。
このアミロイドたんぱくが、呼吸器を構成するいろいろな組織(咽頭(いんとう)、気管、気管支、肺胞壁(はいほうへき)、肺の血管壁、肺の実質など)に沈着して、呼吸困難、せき、喀血(かっけつ)、嗄声(させい)(がらがら声)などの呼吸器症状をひきおこしたものを、肺アミロイドーシスといいます。
現在、アミロイドたんぱくには、いろいろな種類があることがわかっています。
全身性アミロイドーシスの一部として、肺を中心とする呼吸器にアミロイドたんぱくが沈着する場合(原発性アミロイドーシス、骨髄腫合併(こつずいしゅがっぺい)アミロイドーシス、炎症関連性アミロイドーシス、老人性アミロイドーシス、血液透析関連アミロイドーシス、家族性アミロイドーシス)と、呼吸器のみにアミロイドたんぱくが沈着する場合(上部呼吸器型アミロイドーシス、気管気管支型アミロイドーシス、肺野結節型(はいやけっせつがた)アミロイドーシス、肺野びまん性肺胞中隔型アミロイドーシス)とがあります。
なおアミロイドーシスは、厚生労働省の特定疾患(とくていしっかん)(難病(なんびょう))に指定されており、医療費の自己負担分は公費から補助が受けられます。
[原因]
呼吸器に沈着するアミロイドたんぱくが、からだの異物を排除するときにはたらく免疫(めんえき)グロブリンという物質からつくられるということはほぼ確かなのですが、どうして免疫グロブリンからできるたんぱくが肺に沈着するのかは不明です。肺の炎症(肺炎など)がおこっているところに沈着しやすいともいわれています。
[検査と診断]
X線写真やCT検査だけでは、診断できません。最終的には、いろいろな点から肺アミロイドーシスを疑い、気管支鏡や開胸肺生検(かいきょうはいせいけん)によって肺の組織の一部をとり、顕微鏡で病理組織学的に調べてアミロイドたんぱくが沈着していることを証明できれば、診断がつきます。
ただし、アミロイドたんぱくが沈着した組織はこわれやすく、出血しやすいため、この検査には細心の注意が必要になります。
[治療]
全身性疾患の一部としての肺アミロイドーシスは、まず、全身性疾患の治療をします。
呼吸器だけのアミロイドーシスである限局型の場合は切除もできますが、肺の炎症がある場合には、その治療が優先されます。
日常生活の注意としては、禁煙する、かぜをひかないようにするなど、一般的な注意がたいせつです。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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