出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
西アフリカの現在のリベリア共和国海岸部にあたる地方を,かつてヨーロッパ人が指して呼んだ名称。東方の香辛料を求めて探検航海に出たヨーロッパの航海者たちが,この地方に自生するショウガ科のギニアショウガAframomum meleguetaのコショウに似た種子(現地住民にも香辛料として用いられている)を入手して欣喜し,こう名づけた。ギニア湾沿岸の他の地方と同じく,この地方に最初に到達したヨーロッパ人がポルトガル人(15世紀)か,それ以前(14世紀)の北フランス,ディエップの船乗りたちであったかは明らかでない。ディエップの古文書は1694年に焼失したが,インド産のコショウに由来するマラゲットmalaguette(フランス語でコショウの意)という語とそのフランス語の通称〈graines du paradis(天国の粒・種子)〉は,1455年にすでに用いられていたとする説がある。いずれにせよ,その後東方への海路が開かれ,アジアの香辛料が大量にヨーロッパにもたらされるようになったため,この地方の〈天国の粒〉の価値はヨーロッパでは薄れてしまった。〈天国の粒〉の英語名〈grains of paradise〉のgrainsが穀物と誤訳された結果,かつての日本の地理書には,この地方は穀物海岸と記されていた。
執筆者:川田 順造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
西アフリカのギニア湾岸、今日のリベリア、シエラレオネ付近の沿岸。15~16世紀ごろからこの沿岸に渡来していたヨーロッパ人航海者たちは、この海岸でマラゲッタ・コショウが盛んに取引されていたことからこの名称をつけた。コショウは「楽園の穀物」とよばれていたことから、この海岸は穀物海岸Grain Coastともよばれた。
[原口武彦]
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