日本大百科全書(ニッポニカ) 「脊椎麻酔」の意味・わかりやすい解説
脊椎麻酔
せきついますい
局所麻酔の方法の一つで、局所麻酔薬を脊髄(せきずい)くも膜下腔(くう)に注入することによって、脊髄から出てくる神経を麻痺(まひ)させる方法である。正式には、脊髄くも膜下麻酔とよぶ。くも膜下腔に針を刺すには、脊髄の損傷を防ぐために第2腰椎より下で穿刺(せんし)する。麻酔の範囲を調節するためには、ここに注入された局所麻酔薬を脳脊髄液のなかで移動させなければならない。このため、局所麻酔薬は比重が脳脊髄液より重い高比重液と、軽い低比重液が用いられ、体位によってその移動を調節する。
脊椎麻酔によって麻酔された部位で得られる効果は、無痛、筋弛緩(しかん)、血管拡張、発汗停止、腸運動亢進(こうしん)などであり、主として下半身の手術の麻酔に用いられる。使用される局所麻酔薬としては、作用時間の長いブピバカインがおもに用いられ、その他にジブカインやテトラカインがある。合併症としては血圧下降、呼吸抑制、麻酔後の頭痛、馬尾症候群(膀胱(ぼうこう)や直腸障害、下肢の知覚障害や運動障害がみられる)などがあり、禁忌としては脳腫瘍(しゅよう)、穿刺部位の感染、血液凝固異常(血友病など)などがある。
[山村秀夫・山田芳嗣]