日本大百科全書(ニッポニカ) 「腐食動物」の意味・わかりやすい解説
腐食動物
ふしょくどうぶつ
生物の死体やその分解しかかったもの、または排出物などを食物とする動物をさす。腐食性動物または腐生動物ともいう。この食性を腐食性という。ハエやシデムシ、ダイコクコガネなどの昆虫類や、アフリカの草原にすむハイエナ、ハゲワシがこの食性を示す。腐食動物は一般に死体や排出物をすばやくみつけるために、嗅覚(きゅうかく)や視覚がよく発達しているものが多い。熱帯雨林の林床で活動するシロアリや土壌中のササラダニ、トビムシは地表や地中にたまる植物の枯死部を食物としている。ただし食物条件に応じて生きた生物を食べるものもいる。ハイエナは従来屍肉食(しにくしょく)といわれていたが、生きた草食獣を捕まえることも少なくない。
腐食動物は、生態系のなかで、生物体が植物の栄養物質へと分解していく過程に貢献している。熱帯雨林でのシロアリの活動はとくに著しく、落葉などがすぐにシロアリによって摂食され、分解されていくために、植物に吸収される栄養物質の流れが速く、土壌中に含まれる有機物は少ない。そのため、一度熱帯雨林を破壊すると、土壌への有機物の供給が絶え、いままで含まれていた有機物もすぐ減少し、やせた土地だけが残って、森林の回復がむずかしい。
[高村健二]