腸液(読み)チョウエキ

デジタル大辞泉 「腸液」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐えき〔チヤウ‐〕【腸液】

腸腺腸粘膜から分泌されるほぼ透明な液。アルカリ性で、エレプシンマルターゼなどの消化酵素を含み、消化吸収を助け、粘膜を保護する。

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精選版 日本国語大辞典 「腸液」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐えきチャウ‥【腸液】

  1. 〘 名詞 〙 腸腺および腸粘膜上皮から分泌されるアルカリ性の液。エレプシンやラクターゼ、マルターゼの消化酵素を含み、食後二時間ぐらいたってから分泌がはじまり、数時間持続する。広義には、腸に分泌される消化液の総称として、膵液胆汁なども含めていう。〔人体の機能(1952)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「腸液」の意味・わかりやすい解説

腸液
ちょうえき

腸の粘膜からの分泌物をいう。十二指腸粘膜には十二指腸腺(せん)(ブルンネル腺)、小腸全般には腸腺(リーベルキューン腺)があり、アルカリ性の分泌液を出している。前者は、透明で卵白のようにねばねばしており、摂食によって分泌量が増す。後者は、細胞の破片を含む不透明で粘稠(ねんちゅう)な液で、摂食とは関係なく、腸管粘膜が内容物で刺激されると分泌量が増す。いずれも胃からきた酸性の内容物を中和し、腸壁を保護する役目をもっている。盲腸、大腸からもアルカリ性の粘液に富んだ液が分泌されるが、これらは腸内容物を円滑に移動させる役目をもっている。腸液は、神経および化学物質の働きによっても分泌が調節されている。そのおもな仕組みは次のようなものである。(1)内容物により粘膜が刺激されると、腸管壁内の神経叢(そう)を介して反射的に分泌調節が行われる。(2)迷走神経の興奮によって分泌調節が行われる。(3)消化管の壁から分泌される化学物質、すなわち消化管ホルモンによって分泌調節が行われる。

 小腸粘膜は絨毛(じゅうもう)で覆われている。小腸粘膜の表面は上皮細胞であるが、この細胞の表面には細かい絨毛があり、その付け根は刷毛縁(はけえん)とよばれている。ここに多くの消化酵素が含まれており、細胞内において物質を消化している。細胞が破壊されると、その酵素は腸液中に排出される。細胞の平均寿命は5日で、1日のうちに小腸全体では約30%の細胞が交代している。腸液内の酵素は、かつては腸腺から分泌されると考えられていたが、現在では細胞が壊された結果、排出されるということがわかっている。以下、おもな消化酵素について触れる。

 糖質分解酵素のマルターゼは麦芽糖ブドウ糖に、ラクターゼは乳糖をガラクトースとブドウ糖に、スクラーゼショ糖を果糖とブドウ糖に分解する。核酸分解酵素のヌクレアーゼは核酸を五炭糖に、タンパク質分解酵素のジペプチダーゼジペプチドアミノ酸に分解する。なお、人によっては糖質分解酵素の活性の弱い場合がある。たとえば、ラクターゼ活性の弱い幼児がミルクを摂取すると下痢、腸内ガスの増加などの症状が出てくる。したがって、このような場合には、乳糖以外の糖質を与えて栄養をとらねばならない。

[市河三太]

動物の腸液

腸内から回収される溶液であるが、食物などに由来するものは含まず、腸、膵臓(すいぞう)、肝臓からの分泌液をさす。腸の分泌液は、哺乳(ほにゅう)類の場合は次のように分かれる。(1)十二指腸のブルンナー腺(せん)(ブルンネル腺)からの分泌液 タンパク質、凝乳、脂肪などの分解酵素を含み、またエンテロペプチダーゼ(エンテロキナーゼ)も存在する。(2)小腸腺(リーベルキューン腺)と上皮細胞の分泌液 アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、ジサッカリダーゼ、フォスファターゼなど、上皮細胞刷子縁(さっしえん)に局在する酵素も含まれる。腸腺からの分泌はセクレチンによって促進される。(3)大腸からの分泌液 酵素はごく微量でムコ多糖類などを多く含む。

[八杉貞雄]

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百科事典マイペディア 「腸液」の意味・わかりやすい解説

腸液【ちょうえき】

主として十二指腸粘膜および小腸壁から分泌される消化液。分泌腺としてはブルンナー腺,リーベルキューン腺などが知られる。アルカリ性。消化酵素としてはアミノペプチダーゼ,ジペプチダーゼ,腸リパーゼ,マルターゼ,ラクターゼ,エンテロキナーゼなどを含む。
→関連項目小腸

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「腸液」の意味・わかりやすい解説

腸液
ちょうえき
intestinal juice

腸腺,腸粘膜上皮などからの分泌液。透明で鮮黄色,わずかに粘液質の弱アルカリ性。1日に約 1500~3000mlが分泌される。重炭酸ソーダ,塩化ナトリウムを含む。さらに消化酵素として蛋白質分解酵素,脂肪分解酵素,糖分解酵素などを含んでいるが,これらの酵素は腸液中には存在せず,小腸粘膜の上皮細胞に存在し,それが剥離脱落して腸液中に出てきたものである。

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栄養・生化学辞典 「腸液」の解説

腸液

 腸が分泌する分泌液の総称.十二指腸液を含む小腸液,大腸液のほか,膵液,胆汁も含める.栄養素の消化,吸収において重要な機能を果たす.

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世界大百科事典(旧版)内の腸液の言及

【小腸】より

…(1)分泌 十二指腸には肝臓や膵臓の輸管が開き,その分泌物は食物消化にあずかっているが,小腸自身も消化液やホルモンなどを分泌している。(a)腸液と粘液 十二指腸のブルンナー腺(十二指腸腺)から粘液,腸腺から消化液である腸液を分泌する。また絨毛表層の杯細胞からは粘液が分泌される。…

※「腸液」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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