盲腸(読み)もうちょう

精選版 日本国語大辞典 「盲腸」の意味・読み・例文・類語

もう‐ちょう マウチャウ【盲腸】

〘名〙 (Blinddarm の直訳「盲目腸」から)
大腸の起始部が行詰りの袋状となる部分。人では、長さは五~六センチメートルで大腸より太い。一般には盲腸に付属する虫垂のことを呼ぶことがある。
解体新書(1774)三「盲膓、其長無二レ過四指横径、虫膓、附盲膓之端
※まんだん読本(1932)職業婦人大辻司郎〉一「二年ほど前に盲腸(モウチャウ)をやりましてから、すっかり毛が駄目になりました」

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デジタル大辞泉 「盲腸」の意味・読み・例文・類語

もう‐ちょう〔マウチヤウ〕【盲腸】

小腸に続く、大腸の初部。小腸が横から連なるため、下端盲管となり、その先に虫垂ちゅうすいがある。草食動物では比較的長く、消化に関与する。
盲腸の先端にある虫垂、または虫垂炎の俗称。
[補説]書名別項。→盲腸

もうちょう【盲腸】[書名]

安部公房短編小説。昭和30年(1955)、雑誌文学界」に発表。昭和31年(1956)刊行の短編小説集「R62号の発明」に収録

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「盲腸」の意味・わかりやすい解説

盲腸
もうちょう

小腸の末端部は大腸に移行するが、その始部が盲腸である。盲腸からは上行結腸が続く。盲腸の位置は右下腹部腸骨窩(か)に収まり、盲腸の後ろには腸腰(ちょうよう)筋がある。小腸の末端の回腸が大腸に開く部分を回盲口(こう)といい、これから下方に約5~6センチメートルの長さで盲腸がある。盲腸の下端は行き詰まりで嚢(のう)状となっている。太さは大腸のなかではもっとも大きい。回盲口は盲腸上端の後内側壁にあって、回腸はこの部分でやや大腸内腔(くう)に突出し、回盲弁(結腸弁)とよぶヒダ(襞)状の隆起がみられる。この弁は上唇・下唇に分かれ、口唇のように向き合っている。回盲弁の周囲には回腸から続いている内輪筋が肥厚して取り巻き、括約(かつやく)筋のような役割をしており、回腸からの内容物の流入を調節したり、逆に大腸からの逆流を防ぐように働いている。

 盲腸は腹膜に包まれていて、盲腸間膜によって後腹壁に連結しているが、この間膜の状態によって、盲腸がいろいろと異常な位置をとることがある。これを移動性盲腸とよび、臨床症状(下腹部の不快感、鈍痛など)が現れる。しかし、上方6センチメートル、下方2センチメートルまでは正常な生理的移動範囲とされている。

 盲腸と発生源が同じ器官として虫垂(ちゅうすい)(虫様突起)がある。虫垂は盲腸の後内側壁から突出する指状の器官で、長さは約6~8センチメートル、太さは0.5~1センチメートルであるが、個人差も多い。虫垂も腹膜に包まれて虫垂間膜をもち、後腹壁に固着している。多少の移動性はあるが、一般に右腸骨窩に位置する。ヒトの場合は発達も弱く、あまり機能的な意義は認められない(草食動物では長い虫垂をもっている)。一般に盲腸炎とよんでいるものの多くは虫垂炎のことで、このときの圧痛点は、へそ(臍)と骨盤の右の上前腸骨棘(きょく)とを結ぶ線上で、右よりほぼ3分の1の部位に限局する。この部位をマックバーネー点とよび、臨床診断上、重要である。また、マックバーネー点は虫垂の腹壁に対する投影点でもある。なお、盲腸が存在するのは爬虫(はちゅう)類以上である。

[嶋井和世]


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改訂新版 世界大百科事典 「盲腸」の意味・わかりやすい解説

盲腸 (もうちょう)
c(a)ecum

大腸が小腸との境界近くで盲囊を形成した部分をいう。鳥類では1対あり,キジ類などでは発達して微生物発酵の場となるが,スズメ類などでは退化してリンパ組織となっている。哺乳類の盲腸はふつう1個だが,食虫目,翼手目,食肉目などではこれを欠く種類もある。盲腸はウマ,ウサギ,モルモット,キツネザルなどの草食獣では大きいが,イヌ,ヒトのような食肉性の強いものでは小さい。ウサギの盲腸には特有のらせん状ひだがある。盲腸と結腸の境界部にひだや弁をもつ種類もある。盲腸内容は長時間停留し,隣接する近位結腸との間を往復し,その間に腸内微生物の発酵消化を受ける。無菌動物(ラット,マウスなど)では腸内菌叢がないので水の吸収を促進する低級脂肪酸がつくられず,盲腸内に水がたまってふくれる。ウサギの盲腸内容は盲腸糞として体外に排出されたのち,糞食により再消化される。ヒトやウサギなどでは盲腸の先端に虫垂というリンパ組織の突起がみられる。
執筆者:

ヒトの盲腸は右下腹部に位置し,回腸開口部の下方にある短い盲管で,その全長は5~6cmである。盲腸の後内側壁からは虫垂が突出している。回腸開口部には回盲弁があり,内容物が回腸へ逆流するのを防ぐ構造となっている。ヒトの盲腸は短く特有の働きはなく,大腸の一部として機能しているにすぎない。急性虫垂炎のことを俗に盲腸炎という。
大腸 →虫垂
執筆者:


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百科事典マイペディア 「盲腸」の意味・わかりやすい解説

盲腸【もうちょう】

大腸の一部。小腸(回腸)の末端は大腸の側壁に開口するが,この回盲口から下方に延び盲端に終わる部分をいう。成人で長さ5〜6cm。右下腹部にあり,その後左側壁から虫垂が出る。鳥類では1対あり,キジ類などではよく発達しているが,スズメ類では退化している。哺乳(ほにゅう)類のうち草食獣ではよく発達し,特にウサギ類では長い盲管を形成して重要な消化器官となっているが,イヌやヒトでは小さい。急性虫垂炎のことを俗に盲腸炎という。
→関連項目結腸腸間膜

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「盲腸」の意味・わかりやすい解説

盲腸
もうちょう
cecum

大腸の最初の部分で長さ5~6cm。虫垂は盲腸の下端から出る突起である。盲腸の構造や機能は動物によって異なり,草食動物では発達し,肉食動物では退化している。

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栄養・生化学辞典 「盲腸」の解説

盲腸

 大腸の一部で,右下腹部にある.回腸と上行結腸につながっている.先端に虫垂がある.

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世界大百科事典(旧版)内の盲腸の言及

【大腸】より

…【玉手 英夫】
【ヒトの大腸】
 大腸は小腸につづく消化管の最終の部分であって,小腸に比べ太いためこの名がある。大腸は盲腸cecum,結腸colon(上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸),直腸rectumに分けられる(図1)。その長さは個体差はあるが成人では約1.5mである。…

【大腸】より

…小腸の終りから肛門までのの部分を大腸という。その最初の部分は袋状の盲腸で,結腸,直腸とつづく。大腸は哺乳類で最も発達し,とくに草食性のものでは大型で複雑な走行を示し,粘膜にひだや突起などの構造物が多い。…

※「盲腸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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