日本大百科全書(ニッポニカ) 「腸間膜血管閉塞症」の意味・わかりやすい解説
腸間膜血管閉塞症
ちょうかんまくけっかんへいそくしょう
腸間膜血管閉鎖症ともいい、腸間膜の動脈または静脈の主幹部が血栓や塞栓によって急に閉塞され、血行障害をおこして支配領域の脈管壊死(えし)まで招く重大な病態をいう。解剖学的には腸間膜の血管がよく吻合(ふんごう)されているので、普通は一部の血管障害があっても壊死をおこすまでには至らない。動脈の閉塞は塞栓による場合が多く、その原因疾患には心内膜炎や弁膜症などの心疾患をはじめ、大動脈炎や動脈硬化症などの循環器疾患がある。30~70歳の男性に多い。静脈の閉塞には血栓による場合が多く、その原因疾患には門脈圧亢進(こうしん)症、急性虫垂炎、腸炎などのほか、腹部手術、腸閉塞、ヘルニア嵌頓(かんとん)などによる静脈系のうっ滞がある。症状は激烈な腹痛に始まり、ショック症状を示す。治療としては早期に開腹手術を行い、閉塞された血管の再開通を図るが、一般には急性腹症として開腹されることが多い。
[岡島邦雄]