日本大百科全書(ニッポニカ) 「自治体クラウド」の意味・わかりやすい解説
自治体クラウド
じちたいくらうど
全国の自治体の情報システムの基盤となる、大規模なクラウドコンピューティングシステム。各自治体が、業務用の端末などから専用の総合行政ネットワーク(LGWAN(エルジーワン)=Local Government Wide Area Network、地方自治体を相互接続するコンピュータネットワークシステム)を使い、都道府県や市町村の業務システムをクラウド上に集約した大規模なシステム基盤、および住民情報を預けた民間委託のデータセンターに接続し、必要なデータの送受信を行う仕組みである。このシステムを総務省は2009年(平成21)に「自治体クラウド」と名づけ、その普及を図っている。ここで扱われる住民情報は住民基本台帳、納税、国民健康保険、介護保険など、基幹業務にかかわるものだけである。現在、全国各地で実証実験を行いながら全国的な連携基盤が構築されている。自治体だけを結んだ専用線を使うネットワークという点で、インターネットを使ったクラウドとは通信方法が異なる。従来は自治体それぞれが個別に情報システムを運用し、その設備投資や維持管理の高コストが問題視されてきたが、自治体クラウドは共同管理により低コストで効率的な運用ができる。また、データセンターにおいては、建物の堅牢(けんろう)性や有人監視など、セキュリティに配慮がなされている。
2011年に発生した東日本大震災では津波で住民情報を保管していた市町村庁舎のサーバーが被災し、長く業務に支障をきたした。自治体クラウドを運用していれば、仮庁舎でも迅速に業務の再開が可能であるため、震災後は被災地以外でも導入の動きが広がり、被災地が導入する場合は実質的に国が費用を全額負担している。
[編集部]