自社株買い

株式公開用語辞典「自社株買い」の解説

自社株買い

株式会社が、過去に発行した自社の株式をおカネを払って買い戻すことを自社株買いという。自社株買いをおこなうと、一株当たりの利益は、自己株式数を発行済株式総数から差し引いて計算するため増加する。この点では株主への利益配分といえる。しかし、同じ利益配分でも配当と異なる点がある。配当はすべての株主が現金で受け取ることができるが、自社株買いの場合は、現金化するかどうかの選択について株主が決めることができる。従来、自社株買いは、自社株消却(株式消却)やストックオプション付与など目的が制限されていたが、2001年10月の商法改正により、目的を定めずに金庫株として取得・保有することが可能となった。さらに、2003年9月の商法改正によって、一年間の自社株取得枠を株主総会承認によりあらかじめ設定する従来の方法に加え、株式会社は、定款変更によって、一定財源の範囲内で取締役会の決定で自社株買いを機動的におこなえるようになった。配当と自社株買いをあわせた金額を「総還元額」といい、配当とともに自社株買いは、会社の株主還元に対する姿勢を示すものとして注目されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「自社株買い」の解説

自社株買い
じしゃかぶかい
purchase of company's own shares
issuer's own stock repurchase

株式の発行体である企業が、自らの株式を取得すること。日本では株式の消却のための取得などの例外を除き、原則として禁止されてきた(例外として取得・消却が認められるのは減資の実施などに限られていた)。それは、企業が自己株式を取得・保有することは、取得原資がなんであれ企業の財産的基盤を損なうおそれがあること、株式取引の公正を阻害するおそれがあることなど、公益に反する面が強いとされたからである。

 しかし、国際化の進展などに伴う財務戦略の弾力化に対する企業社会からの要請もあり、自己株式取得にかかわる規定は1994年(平成6)6月以降、部分的、段階的に自由化への道をたどるようになった。その背景としては、(1)敵対的な買収に対する企業側の防止策の一つとして自己株式の取得が求められたこと、(2)減資というイメージの悪い手法によらず発行済株式の一部消却を可能とすることで企業の財務運営上の選択肢が広がること、(3)需給面で株式の余剰感を薄め持ち合い解消の受け皿としての機能が期待されること、(4)低下傾向を示す自己資本利益率ROE)や高止まりを続ける株価収益率(PER)などを改善させ市場の株価割高感を払拭(ふっしょく)させる余地があること、などを指摘しうる。

 1994年の商法改正は、自己株式取得を原則的に禁止するという従来の枠組みのなかで、例外的な取得の許容事由を拡大したものである。ここで具体的に自己株式の取得が可能となったケースは、(1)使用人への譲渡、(2)株式消却のための利益による買入れ、(3)非公開会社などの特別なケース、の3点であった。

 その後、2001年(平成13)6月の法改正では、1994年の改正内容がさらに拡大された。自己株式の取得・保有を原則禁止とする従来の立場から、原則自由へと転換したのである。目的規制が撤廃されたため、企業は例外的に認められていたケースに縛られず、自由に自己株式の取得を行うことが可能となった。また、保有期間の制限や数量制限も撤廃された結果、企業が取得した自己株式を手元に保有する金庫株(treasury stock)が解禁された。これにより、期末に保有する自己株式については、貸借対照表(バランスシート)上の資本の部に自己株式の項を設け、控除形式により記載する。企業にとっては、財務運営上の自由度が高まったものと評価される。

 自己株式の取得の影響を、まず株式需給面についてみると、取得目的のいかんにかかわらず、新たな需要創出であるから、この点では株式需給にプラスのインパクトを与える。また、利益による株式の買入れ・消却が実施された場合は、その後の投資価値の評価により一様ではないが、市場への総需要に変化がなければ供給減少によるプラス効果が残る。

 一方、投資価値面への影響について1株当り利益(EPS)を例にみると、単純な議論では自己株式の取得・消却を行った場合、分母の発行済株式数が減少するから、その逆数倍だけEPSが上昇するとされる(たとえば、発行済株式数が2分の1に減少すればEPSは2倍になる)。ROEについても、自己資本が減少する分だけ上昇が見込まれるといわれる。しかし、これらは表面的な見方でしかない。企業が自己株式の取得・消却を行うと、発行済株式が減少する反面、株式取得に用いた現金も社外に流出するからである。したがって、自己株式の取得・消却に伴う現金流出が、バランスシートや期間損益に与える影響をEPSの計算に反映させる必要がある。つまり、自己株式取得後のEPSの評価を行うためには、発行済株式数の減少によるEPS増加効果と、現金流出に伴うEPS減少効果とを比較考量しなければならない。EPSについていえば、自己株式取得前の益回り(EPS/株価)が金利水準を上回っていることが、自己株式の取得によるEPS向上の条件になるのである(この点はROEなどについても同様)。

 さらに、自己株式の取得・消却の実施は、借入依存度の上昇(自己資本比率の低下)を招く懸念も残る。したがって、この制度を有効に機能させるためには、実施する企業にも投資価値に配慮した対応が求められる。

[高橋 元 2021年12月14日]

『柴健次著『自己株式とストック・オプションの会計』(1999・新世社)』

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ASCII.jpデジタル用語辞典「自社株買い」の解説

自社株買い

企業が、発行した株式を買い戻すこと。自社株買いをした株式を償却することを自社株買い消却という。自社株買い消却は、発行済み株式数や株主資本の減少につながり、一株利益を引き上げることや株主資本利益率(ROE)を向上させるという点でメリットがある。自社株買いは日本では1994年に商法を改正することで解禁となっている。また2001年の商法改正で、自社株買いで得られた株式を企業が企業内に置いておける金庫株が認められるようになった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「自社株買い」の解説

自社株買い
じしゃかぶがい

株式会社が自社の発行済株式を市場などから買い戻す行為。株式消却ストックオプション自社株購入権)付与など,かつては特定の目的に限定されていた。しかし 2001年の商法改正で金庫株(→自己株式)が解禁され,自社株買いの用途が広がった。具体的には,株式持合解消の受け皿や,株式交換による機動的な事業再編などに活用する例が多い。自社株を買い戻し消却した場合,発行済株式総数が減少するため,株主資本利益率 ROEは上昇する。

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