会社の資本金の額を減らすこと。資産の一部を株主に払い戻して事業を縮小する際や、累積赤字の穴埋めのため資本金を取り崩す場合などに行われる。赤字がかさんだ東芝も2016年に減資した。資本金1億円以下を対象とする中小企業向けの優遇税制を狙った「節税」のための減資も過去に続出。資本金では中小に区分されていても所得の多い企業について、特例から外す税制改正が実施された。
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株式会社において資本金の額を減少すること。資本減少の略称。物的会社の場合、資本金は会社信用の基礎をなすから、みだりにこれを減少すべきではないが(資本不変の原則)、実際上必要がある場合に、法はきわめて厳重な手続のもとで許容している。より具体的に述べると、減資を行うと、会社の資産規模が縮小し会社の事業基礎に変更を生じさせるために株主に少なからぬ影響を与え、かつ、会社の責任財産の確保の基準の数字を減少させるために債権者に少なからぬ影響を与える。よって、株式会社において減資を行う場合には、原則として、株主総会の決議と債権者異議手続とが必要である。
[戸田修三・福原紀彦]
資本金を減少する場合には、(1)減少する資本金の額、(2)減少する資本金の額の全部または一部を準備金とするときは、その旨および準備金とする額、(3)資本金の額の減少が効力を生ずる日を定めなければならない(会社法447条1項)。この決議は原則として特別決議であるが、資本金の欠損額を填補(てんぽ)するとき(損失を被った会社が現在の資本金のままでは剰余金分配の見込みがないとき、すでに減少している会社財産に資本金の額をあわせ(欠損の填補)、これにより将来の剰余金分配を可能にする目的で行う場合)には株主総会の普通決議で行うことができる(同法309条2項9号)。また、株式会社が株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、当該資本金の額の減少の効力発生日後(同法447条1項3号、449条6項1号)の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときは、事実上減資が生じないので、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)で行うことができる(同法447条3項)。
[戸田修三・福原紀彦]
株式会社が資本金額を減少する場合には、当該株式会社の債権者は会社に対し、資本金減少について異議を述べることができる。その際、会社は、(1)資本金の額の減少の内容、(2)株式会社の計算書類に関する事項で会社計算規則に定める事項(計算書類の公告、有価証券報告書提出に関する事項など)、(3)債権者が一定の期間(最低1か月)内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者(債権者の所在、債権の原因および内容の大体を会社が知っている債権者。判例は、その債権の存在につき会社と係争中の債権者も該当しないとはかならずしもいえないとしている)には、各別にこれを催告しなければならない(会社法449条1項・2項)。所定の期間内に異議を述べなかった債権者は、当該資本金の額の減少について承認したものとみなされる(同法449条4項)。債権者が期間内に異議を述べたときには、株式会社は、当該債権者に弁済し、もしくは相当の担保を提供するなどを行わなければならない(同法449条5項)。これら債権者異議手続が終了しなければ、資本金の額の減少は効力を生じない(同法449条6項)。
[戸田修三・福原紀彦]
『太田達也著『「増資・減資の実務」完全解説――法律・会計・税務のすべて』改訂増補版(2006・税務研究会出版局)』▽『勝田一男著『増資・減資の登記マニュアル』(2007・中央経済社)』
株式会社または有限会社において資本の額を減少させること。資本減少の略。会社財産維持の基準である資本の額の減少により,減少後の資本の額を超える会社財産の株主への支払が可能となることがその直接の効果であり,そのことから,減資は,主として,会社財産の一部を株主に返還してその営業規模を縮小する目的(実質上の減資と呼ばれる),あるいは,経営が悪化して資本の欠損が生じている会社において会社財産の払戻しはせずに資本の額だけ減少させることによって欠損を縮小ないし消滅させ,将来の利益配当を行いやすくする目的(名目上の減資と呼ばれる)で行われる。日本では実質上の減資の実例は少ないのに対して,経営の悪化した会社の再建のために名目上の減資が行われることが多く,とくに会社更生手続においては従前の資本をまったくゼロにしてしまう,いわゆる100%減資すら行われている。
減資は会社財産の基本的なあり方を変えることになり,株主・社員にとって重大な利害関係が存するだけでなく,会社債権者にとっても自己の債権の満足をうけるための唯一の引当財産である会社財産の減少につながることから,やはり重大な利害関係がある。そこで,法律は,減資について株主・社員の意思を反映させるべく株主総会・社員総会の特別決議を要するものとするとともに,債権者保護のための手続を経ることを要求している。株式会社についてこれを具体的にみると,減資は株主総会の特別決議を要するものとし(商法375条1項),この決議では減少の方法についても定めるものとしている(376条1項)。減少の方法としては,株金額を減少させる方法と株式数を減少させる方法があり,後者には,株式の消却による方法と株式の併合による方法がある。さらに株式の消却の方法には,会社が株主との契約により株式を取得して行う任意消却と,通常は持株数に比例して平等に,株主の意思に関係なく行う強制消却の方法がある。名目上の減資には株式の併合または強制消却の方法が用いられることが多い。この減資の決議がなされると,それに従った手続を進めるとともに会社は会社債権者に対して一定期間内に減資について異議のある場合には異議を述べるべき旨の公告をなすことを要し(さらに知れたる債権者には各別にこれを催告することも要する),債権者がこれに異議を述べたときは会社は弁済,相当の担保の提供などの措置をとらなければならないものとされている(376条2項)。このような減資についての手続は有限会社についても株式会社に準じて定められている(有限会社法58条)。
執筆者:山下 友信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし,株主の立場からみれば,株式配当は利益の配当として受け取るはずの金銭を新たに拠出したことを意味し,その分だけ,株主の有限責任の限度が拡大したことになる。 以上に述べた資本金の増加,すなわち増資の場合に対比して,資本金の減少,すなわち減資の場合は,株主の有限責任の限度が縮小することとなるので,商法は主として債権者保護の観点から減資を厳しく規制している(商法375条ないし380条)。減資の手続がとられるのは,通例としては,損失が累積し,欠損金(純資産額が資本金,資本準備金,および利益準備金の合計額を下回る額)が巨額になって,利益準備金と資本準備金とのいずれをもってしても塡補(てんぽ)しえず,減資を最後の手段としている場合である。…
※「減資」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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