若年性高血圧症(読み)じゃくねんせいこうけつあつしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「若年性高血圧症」の意味・わかりやすい解説

若年性高血圧症
じゃくねんせいこうけつあつしょう

高血圧症のうち、一般に35歳以下で収縮期血圧140ミリメートル水銀柱(mmHg)以上、拡張期血圧90mmHg以上を示すものをいう。若年性高血圧症は全若年者中約1~3%に認められることが知られている。その発生原因により2種類に分けられる。すなわち、高血圧の原因疾患が明らかなもの(二次性もしくは続発性若年性高血圧症)と、原因が不明なもの(一次性もしくは本態性若年性高血圧症)である。壮・老年期に発症する高血圧症では一次性(本態性)のものが多いが、若年性高血圧症では二次性高血圧が20~30%を占めるとされている。その原因の多くは腎(じん)疾患によるもので、慢性糸球体腎炎や腎血管の病変によるものが多い。また、ほかの原因として、内分泌性高血圧がある。高血圧をきたす内分泌疾患では、副腎皮質から血圧を上昇させるホルモンアルドステロンが過剰に分泌される原発性アルドステロン症、同様に副腎皮質ホルモンコルチゾールが過剰に分泌されるクッシング病クッシング症候群、また、副腎髄質からの交感神経性ホルモン(アドレナリンなどのカテコールアミン)の過剰分泌を呈する褐色細胞腫が主要なものである。そのほか、甲状腺(こうじょうせん)ホルモンの過剰分泌を生じるバセドウ病も二次性高血圧の原因となることがある。種々の検査によって二次性の若年性高血圧症であることが確認されれば、高血圧の原因となっている疾患の治療を、外科的手術を含め行う必要がある。

 若年性一次性高血圧症では血圧の動揺性が著しいこと、および心臓腎臓、脳などの臓器障害の程度が比較的軽いことが知られるが、放置すればいずれ臓器障害が進行してくる。したがって、壮・老年期の高血圧症同様、食塩制限などの生活習慣管理とともに降圧剤投与など、高血圧に対する治療が必要である。血圧の動揺性の著しい例では血圧の変動を注意深く観察し、治療の要否を決定することが重要である。

[木村和文 2020年8月20日]

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