褐色細胞腫 (かっしょくさいぼうしゅ)
pheochromocytoma
副腎髄質やまれにはツッカーカンダル器官などの傍神経節のクロム親和性細胞から生じた腫瘍で,カテコールアミンcatecholamines(アドレナリン,ノルアドレナリンなどのアミン類)を産生する。クロム染色により,腫瘍細胞は黄褐色に染まる。ほとんど副腎に発生するが,まれには骨盤腔,縦隔,頸部などにも発生する。90%は良性であるが,10%は悪性で転移がみられる。症状は,特徴的な高血圧のほかに,頭痛,動悸,胸痛,発汗,顔面蒼白,四肢冷感,やせなどがみられる。症状発現のしかたによって,発作型と持続型に分けられる。患者は尿に糖が出ることが多く,ブドウ糖負荷試験では糖尿病型を示し,耐糖能の低下がある。基礎代謝は亢進するが,甲状腺機能は正常である。高血圧による心臓肥大や高度の眼底変化のみられるものもある。カテコールアミン代謝産物である,メタ誘導体(メタアドレナリンmetadrenaline,ノルメタアドレナリンnormetadrenaline)およびバニリルマンデル酸vanillylmandelicacid(VMA)の尿中への排出が増加する。ヒスタミン,レジチン,チラミンの負荷試験での血圧変化が診断上参考になる。褐色細胞腫と甲状腺髄様癌との合併はシップル症候群と呼ばれ,多発性内分泌腺腫症Ⅱ型multiple endocrine adenomatosis type Ⅱと考えられる。治療は外科的手術による。
執筆者:村上 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Sponserd by 
褐色細胞腫
かっしょくさいぼうしゅ
副腎(ふくじん)髄質細胞、ときに交感神経系のクロム親和細胞から発生する腫瘍(しゅよう)。腫瘍細胞からカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)が大量に分泌されるためにいろいろな症状がおこる。おもなものは高血圧と糖尿病である。高血圧は発作的におこる場合と、持続的に血圧が高い場合とがある。発作的な場合は、急に不安感や緊張感に襲われ、動悸(どうき)や頭痛が始まる。脈が速くなったり手足が冷たくなり、ときには耳鳴りや吐き気、嘔吐(おうと)がみられる。また尿糖がしばしば出る。発作は数分から1、2時間、ときには数日続くこともある。しかしこのようなはっきりした発作がなく、いつも血圧が高く、また糖尿病になっている場合もある。診断には血中および尿中のカテコールアミンを測定する。治療は手術によって腫瘍を摘出する。高血圧で諸器官が悪くならないうちに手術をすれば完全に治る。
[高野加寿恵]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
Sponserd by 
家庭医学館
「褐色細胞腫」の解説
かっしょくさいぼうしゅ【褐色細胞腫 Pheochromocytoma】
[どんな病気か]
副腎(ふくじん)の髄質(ずいしつ)にできた腫瘍(しゅよう)によって、自律神経(じりつしんけい)にはたらくアドレナリンやノルアドレナリン(まとめてカテコラミンとかカテコールアミンと呼びます)が過剰に分泌(ぶんぴつ)されて、高血圧をおこす病気です。
若い人が、ひどい高血圧をおこすのは、この病気が原因のことがあります。
高血圧のほか、顔面の紅潮(こうちょう)、ひどい発汗、動悸(どうき)、頭痛などもおこります。
これらの症状は、長く続く場合もありますが、ときどき発作的におこる場合もあります。
[検査と診断]
血液と尿をとって、その中に含まれるカテコラミンの量を調べると、増加しているのがわかります。腫瘍をさがすために、CTスキャン、MRI、血管造影などの画像診断を行ないます。
[治療]
腫瘍を摘出すれば治ります。手術ができない場合には、血圧を下げる作用のある交感神経遮断薬(しゃだんやく)(α(アルファ)受容体遮断薬)を使用します。
出典 小学館家庭医学館について 情報
Sponserd by 
褐色細胞腫
腫瘍の一種.副腎髄質,パラガングリオンなどのクロム親和性組織より生成.良性が多いがカテコールアミンを分泌するため高血圧を起こす場合が多い.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
Sponserd by 