草木図説(読み)ソウモクズセツ

デジタル大辞泉 「草木図説」の意味・読み・例文・類語

そうもくずせつ〔サウモクヅセツ〕【草木図説】

江戸後期の植物図鑑。30巻。飯沼慾斎著。草部20巻は安政3~文久2年(1856~1862)刊。木部10巻は未刊日本植物リンネ分類による24綱目に分けて図解したもの。のちに牧野富太郎らが増訂版を刊行

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精選版 日本国語大辞典 「草木図説」の意味・読み・例文・類語

そうもくずせつサウモクヅセツ【草木図説】

  1. 江戸後期の植物図説。三〇巻。飯沼慾斎著。草部二〇巻だけ安政三~文久二年(一八五六‐六二)に刊行。木部一〇巻は未刊だったが、北村四郎編注により昭和五二年(一九七七)に刊行された。日本の植物をリンネの分類法により二四綱目に分け、図示・解説したもの。牧野富太郎が明治四〇~大正二年(一九〇七‐一三)に「増訂草木図説」を刊行。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「草木図説」の意味・わかりやすい解説

草木図説
そうもくずせつ

日本最初のリンネ分類による植物図鑑。飯沼慾斎(いいぬまよくさい)の執筆。草部20巻、木部10巻。草部は1856年(安政3)から1862年(文久2)にかけて刊行された。明治に入り、田中芳男(よしお)・小野職(もとよし)増訂の第二版(1875)、牧野富太郎による増訂第三版(1907)が出版され、未刊の木部は北村四郎編注で1977年(昭和52)に刊行された。本書作成には、ホッタインMartin Houttuyn(1720―1798)、ドドネウスRembert Dodoneus(1517―1585)、オスカンプDieterich Leonhard Oscamp、キニホフJohann Hieronymus Kniphoff(1704―1763)、ワインマンJohann Wilhelm Weinmannの植物学書が利用された。ヨーロッパ植物学の受容と紹介に伊藤圭介(けいすけ)、宇田川榕菴(ようあん)たちが努力してきたが、本書の出現でヨーロッパ植物分類学が日本に定着することができた。

矢部一郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「草木図説」の意味・わかりやすい解説

草木図説 (そうもくずせつ)

飯沼慾斎による植物図鑑。草類1250種,木類600種の植物学的に正確な解説と写生図から成る。草部20巻,木部10巻。草部は1852年(嘉永5)ごろ成稿,56年(安政3)から62年(文久2)にかけて出版された。本書は日本最初のC.vonリンネの24綱分類による植物図鑑である。本草を脱却した西欧の植物分類によるところに意義がある。江戸時代の西欧植物学受容の成果をここに見ることができる。参考にした蘭書は,ホッタインMartin Houttuynの博物誌を中心に,ドドネウスRembert Dodonaeus,オスカンプDieterich Leonhard Oscamp,キニホフJohann Hieronymus Kniphof,ワインマンJohann Wilhelm Weinmannの植物学書5種である。明治に入り,田中芳男・小野職愨増訂の第2版(1875),牧野富太郎による増訂の第3版(1907)が出版され,明治期にもおおいに利用された。未刊の木部は,1977年に北村四郎編注で出版された。
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百科事典マイペディア 「草木図説」の意味・わかりやすい解説

草木図説【そうもくずせつ】

飯沼慾斎著書。日本産植物約2000種を西欧植物学書を参考にして,リンネ式に分類し,写生・解説した植物図鑑。草部20巻は1856年―1862年(安政3年―文久2年)刊,木部10巻は未刊(1977年に北村四郎編注で出版された)。それまでの本草学的なものを脱した植物学書として歴史的意義をもつ。

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世界大百科事典(旧版)内の草木図説の言及

【飯沼慾斎】より

…32年(天保3)大垣近郊の長松村の別荘平林荘に隠居し,博物学の研究に専念した。52年(嘉永5)ごろに日本で最初のC.vonリンネの分類法による植物図鑑《草木図説》草部20巻を完成し,56年(安政3)から62年(文久2)にかけて出版した。本書はオランダのホッタインMartin Houttuynの博物誌などを参考とし,本草を脱却した近代的な植物図鑑であり,江戸時代の西欧植物学導入の総決算といえるものであった。…

【本草学】より

…やっと18世紀になって,貝原益軒の《大和本草》(1709)や稲生若水の《庶物類纂》(未完),小野蘭山《本草綱目啓蒙》(1806)などによって日本風の本草学が集成されていった。江戸時代末にはC.P.ツンベリーやP.F.vonシーボルトなどを介して西洋本草学の影響が及び飯沼慾斎《草木図説》(1852),岩崎灌園《本草図譜》(1828)などが出版され,日本の植物についての高い知見が示されていった。【岩槻 邦男】。…

※「草木図説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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