日本最初のリンネ分類による植物図鑑。飯沼慾斎(いいぬまよくさい)の執筆。草部20巻、木部10巻。草部は1856年(安政3)から1862年(文久2)にかけて刊行された。明治に入り、田中芳男(よしお)・小野職(もとよし)増訂の第二版(1875)、牧野富太郎による増訂第三版(1907)が出版され、未刊の木部は北村四郎編注で1977年(昭和52)に刊行された。本書作成には、ホッタインMartin Houttuyn(1720―1798)、ドドネウスRembert Dodoneus(1517―1585)、オスカンプDieterich Leonhard Oscamp、キニホフJohann Hieronymus Kniphoff(1704―1763)、ワインマンJohann Wilhelm Weinmannの植物学書が利用された。ヨーロッパ植物学の受容と紹介に伊藤圭介(けいすけ)、宇田川榕菴(ようあん)たちが努力してきたが、本書の出現でヨーロッパ植物分類学が日本に定着することができた。
[矢部一郎]
飯沼慾斎による植物図鑑。草類1250種,木類600種の植物学的に正確な解説と写生図から成る。草部20巻,木部10巻。草部は1852年(嘉永5)ごろ成稿,56年(安政3)から62年(文久2)にかけて出版された。本書は日本最初のC.vonリンネの24綱分類による植物図鑑である。本草を脱却した西欧の植物分類によるところに意義がある。江戸時代の西欧植物学受容の成果をここに見ることができる。参考にした蘭書は,ホッタインMartin Houttuynの博物誌を中心に,ドドネウスRembert Dodonaeus,オスカンプDieterich Leonhard Oscamp,キニホフJohann Hieronymus Kniphof,ワインマンJohann Wilhelm Weinmannの植物学書5種である。明治に入り,田中芳男・小野職愨増訂の第2版(1875),牧野富太郎による増訂の第3版(1907)が出版され,明治期にもおおいに利用された。未刊の木部は,1977年に北村四郎編注で出版された。
執筆者:矢部 一郎
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…32年(天保3)大垣近郊の長松村の別荘平林荘に隠居し,博物学の研究に専念した。52年(嘉永5)ごろに日本で最初のC.vonリンネの分類法による植物図鑑《草木図説》草部20巻を完成し,56年(安政3)から62年(文久2)にかけて出版した。本書はオランダのホッタインMartin Houttuynの博物誌などを参考とし,本草を脱却した近代的な植物図鑑であり,江戸時代の西欧植物学導入の総決算といえるものであった。…
…やっと18世紀になって,貝原益軒の《大和本草》(1709)や稲生若水の《庶物類纂》(未完),小野蘭山《本草綱目啓蒙》(1806)などによって日本風の本草学が集成されていった。江戸時代末にはC.P.ツンベリーやP.F.vonシーボルトなどを介して西洋本草学の影響が及び飯沼慾斎《草木図説》(1852),岩崎灌園《本草図譜》(1828)などが出版され,日本の植物についての高い知見が示されていった。【岩槻 邦男】。…
※「草木図説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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