改訂新版 世界大百科事典 「荘務」の意味・わかりやすい解説
荘務 (しょうむ)
荘園において勧農,検注,年貢収納など現地の支配・管理を行うこと,またはその権限を与えられた者。例えば1217年(建保5)に高野山領備後国太田荘の地頭三善康信が定めた地頭方荘務十箇条には,加徴米,関東人夫,百姓逃亡跡名田,桑,佃(つくだ),勧農などについての規定がされている。このように荘務とはもともと荘園現地の支配・管理それ自体をさすことばであったが,平安時代末期,荘園寄進がさかんに行われ,本家-領家-預所-下司・公文という重層的な荘園支配体系が形成されるとともに,荘務執行の権限がどこに所属するのかは重要な問題となった。一般には寄進主体である預所などが荘務執行権を確保・相伝したが,鎌倉時代になると荘務権をめぐってしばしば抗争も発生した。荘務権をもつものは,現地に荘務雑掌(しようむざつしよう)(雑掌)を派遣し,年貢の徴収・輸送・配分を行い,紛争がおきた際は訴訟に責任を負った。
執筆者:斉藤 利男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報