日本大百科全書(ニッポニカ) 「荘厳ミサ曲」の意味・わかりやすい解説
荘厳ミサ曲
そうごんみさきょく
Missa solemnis
ベートーベンが晩年に作曲したミサ曲(ニ長調、作品123)。「ミサ・ソレムニス」とは本来カトリックの典礼のなかでもっとも荘重かつ大規模なミサをさすことばだが、この作品も題名の意味するとおり、4人の独唱者、混声四部合唱、そしてパイプ・オルガン付き管弦楽という編成をとり、五楽章あわせて約1時間半に及ぶ大きなミサ曲である。しかし内容は、教会における典礼用音楽の枠をはるかに超えたもので、むしろ個人的な宗教観が強く表れた音楽というべきであろう。ベートーベンは5年の歳月(1819~23)を費やし、独自の歌詞解釈と交響楽的手法によって、まれにみる個性的なミサ曲を完成させたのである。1824年ペテルブルグで一部初演。
[三宅幸夫]