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宗教音楽 しゅうきょうおんがくreligious music

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宗教音楽
しゅうきょうおんがく
religious music

ある宗教儀式に用いられる典礼音楽と,直接には典礼に用いられないが宗教的内容をもつ音楽とを総称していう。諸芸術のなかで特に音楽は宗教との結びつきが強く,かつ深い。音楽がその発生期において宗教的儀式と一体となっていたことは明らかであり,音楽の発展の初期の段階において宗教が果した役割は非常に大きい。イスラム教を除いて世界のほとんどの宗教は典礼に音楽を用いており,それぞれの音楽の発展のうえに大きな貢献をしている。たとえばグレゴリオ聖歌はローマ教会の代表的な典礼音楽であるばかりでなく,のちのヨーロッパ音楽の発展の母体となった。日本でも,仏教音楽の声明 (しょうみょう) が能楽の要素となるなど,宗教音楽と世俗音楽の交流は随所にみられる。

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世界大百科事典 第2版の解説

しゅうきょうおんがく【宗教音楽】

諸宗教における典礼音楽ばかりでなく,広くは宗教的な色合いをもつ音楽をも包含する概念。今日の未開民族における宗教と音楽との混然たる状態は,遠い昔における人類の宗教と音楽との未分化の姿を示していると考えられる。他方,世俗化ないし非宗教化が極度に促進されたかに見える現代の先進社会において,ケージシュトックハウゼンらの〈前衛音楽〉,メシアンの総合的芸術,若者たちの熱狂的〈ポピュラー音楽〉などの根底に流れているものは何なのかと問うとき,そこに宗教的なるものの存在をうかがうことができるともいえよう。

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大辞林 第三版の解説

しゅうきょうおんがく【宗教音楽】

宗教の一環としての、または宗教と結びついた音楽の総称。特にキリスト教の音楽をさすことが多い。礼拝のためのもの、信仰心を呼び起こすためのもの、宗教的題材により作曲されたものなどに区別される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

宗教音楽
しゅうきょうおんがく

宗教となんらかの形で結び付いて演奏される音楽。音楽と宗教の結び付きはきわめて深く、古今東西の宗教はそれぞれ独自の宗教音楽を発展させており、その様式や種類も非常に多い。これは、音楽が形にとらわれない音を素材にし、論理を超えて直接的な感動をもたらしうることが、なんらかの意味で宗教と一種の類似性をつくりだしているためとも考えられる。
 ギリシア神話の楽人オルフェウスの物語にもみられるように、音楽あるいは楽器の創始者を神とし、また音楽の力の神秘さをたたえる説話は世界各国に広く認められるものであり、原始宗教においては音楽的行為即宗教的行為とみなしうるものが少なくない。また、宗教とよべるほどのものをもたない原始社会の呪術(じゅじゅつ)や魔術においては、呪文や祈祷(きとう)の際、日常の声ではない特別な声を使い、つまり一種の歌う行為によって自分を超え、人間を超えるのであり、こうした例は世界各地にみいだすことができる。このようにみると、宗教は音楽の起源とも結び付いているといえよう。
 文化民族における宗教においても、音楽はきわめて重要な地位を占めてきた。バラモン教、ヒンドゥー教、仏教、チベット仏教(ラマ教)などは、それぞれの地域に固有の宗教音楽を形成してきた。中国の儒教には「礼楽一致」の思想がみられる。日本の神道(しんとう)や仏教でも、前者には神楽(かぐら)(御(み)神楽)、東遊(あずまあそび)、祭囃子(まつりばやし)など、後者には声明(しょうみょう)、盲僧琵琶(もうそうびわ)、普化(ふけ)尺八など、独自の音楽を発展させている。古代メソポタミア、エジプト、ギリシア、ローマなどにも、宗教的行事に結び付いてそれぞれ音楽が行われていたことは、記録、伝承などから明らかである。そして以上の宗教では、舞踊も、音楽と結び付いてかなり重要な役割を果たしていたことがうかがわれる。
 古今の大宗教のうち、音楽に対して消極的であり、原則として礼拝における音楽の使用を排するのはイスラム教だけといえる。その正統派は、教義上、音楽を官能的快楽をもたらすものとして容認していないにもかかわらず、コーランの読誦(どくしょう)や、礼拝の時を告げる呼びかけとしてのアザーンなどには、当事者の意識とはかかわりなく、明らかな音楽的展開が示されていることは注目されてよい。
 これと対比的に、ユダヤ教、そしてその強い影響下で成立したキリスト教は、その教義を反映して音楽を重要視し、積極的に芸術的な宗教音楽を育成してきたのであるが、この内部でも、中世以来、教会音楽の美化、技巧化が問題とされ、禁令の出されることもたびたびであった。そのもっとも有名なものが16世紀のトレント公会議(1545年に初めてトレントの聖堂で開かれたカトリック教会総会議)で、技巧的な宗教音楽を追放しようとしたが、結局音楽は生き延び、今日の世界の音楽のなかでキリスト教音楽の占める比重はきわめて大きなものがある。そのため、日本においてさえも、宗教音楽の語はキリスト教音楽の意味で理解されるのが普通であったが、近年では民族音楽の分野の研究の進歩とともに、各地・各宗教の音楽とその相互関係などについての再検討が進められている。
 なお、もっとも高度に発達したキリスト教音楽を例にとって宗教音楽を区別すると、大きく次の六つに分けることができる。(1)礼拝儀式のための典礼音楽、(2)便宜的に礼拝に使用できる準典礼音楽、(3)正規の典礼ではないが習慣的に教会で執行される宗教行事のための音楽、(4)私的な祈り、信徒の信仰を励まし、布教するための伝道音楽、(5)宗教民謡、(6)宗教的題材によった鑑賞のための演奏会用宗教音楽、以上であるが、宗派・教派によりその名称と範囲には差がある。[皆川達夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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