葉室家 (はむろけ)
藤原氏北家高藤の流れ,勧修寺家の分流。藤原為房の次男権中納言藤原顕隆を祖とする。その孫光頼(1124-73)が山城国葛野郡葉室の地に営んだ別業にちなんで葉室を家号とした。家格は名家。始祖顕隆は白河院の近臣として権勢を振るい,夜の関白と称され,孫光頼も剛直の人と知られ,平治の乱では藤原信西や平清盛とよしみを通じ,平氏政権樹立の道を開いている。また,光頼の孫光親は承久の乱で鎌倉幕府追討の宣旨を書いたために幕府のために斬られ,その子光俊も配流されている。しかし光俊の弟定嗣は,後嵯峨院の近臣として院中の政治にかかわり,そのようすの一端は日記《葉黄記》にくわしい。こののち南朝に仕えた者もいるが,代々大・中納言を先途に朝務に専念し,朝儀典礼に通暁する者も少なくなく,江戸時代の頼業,頼孝,頼重,頼胤などの残した記録・文書等は,その時代を知るうえで不可欠のものである。江戸時代の家禄は183石。1884年華族令の施行により伯爵を授けられた。なお庶流に八条,粟田口,堀川,岩倉などの諸家がある。
執筆者:米田 雄介
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葉室家
はむろけ
藤原氏北家(ほっけ)の内大臣高藤(たかふじ)を始祖とする勧修寺(かじゅうじ)流より出た公家(くげ)で、権中納言(ごんちゅうなごん)葉室顕隆(はむろあきたか)を初代とする。高藤7代の孫葉室為房(はむろためふさ)が後三条・白河両天皇に近仕して家勢を再興、その次男顕隆は白河院執行別当(しぎょうべっとう)として権勢を振るい、兄為隆(ためたか)をしのいで嫡家の観を呈した。顕隆の息葉室顕頼(はむろあきより)も鳥羽(とば)院の権臣として活躍し、その息葉室光頼は後白河院政下の大剛(だいごう)の名臣とうたわれたが、その後は葉室光雅(はむろみつまさ)(1149―1200)・葉室宗頼(はむろむねより)(1154―1203)の2流に分かれた。その光雅流は、光雅の息葉室光親(はむろみつちか)(1176―1221)が承久(じょうきゅう)の乱に際して後鳥羽院の謀臣として処刑され、さらにその子孫が南朝に仕えて衰退したのに対し、宗頼は後白河・後鳥羽両院に近仕し、権臣源通親(みちちか)とも親交を結んで家勢をおこし、子孫代々、大・中納言を先途とする公卿(くぎょう)の地位を継承して江戸時代末に及んだ。家名は光頼が山城国葛野郡(かどのぐん)葉室(京都市西京区山田)に別業(べつぎょう)を営んだのに由来し、江戸時代の家格は名家(めいか)。明治の華族令により伯爵を授けられた。
[橋本義彦]
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葉室家
はむろけ
藤原北家,高藤7代の孫為房の次男顕隆の流れ。顕隆は白河法皇の信任が厚く,一流は栄えた。権大納言が極官。家格は名家。明治になって伯爵。
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世界大百科事典(旧版)内の葉室家の言及
【演技】より
…時代とともに,演技とは何か,が問い返されるのは,演劇の宿命でもある。だが,〈人生の真実〉に演劇の本質をみるという根本思想は17世紀初頭に,シェークスピアが《ハムレット》のなかですでにはっきりと語っている。ハムレットが旅役者の座長に,あまりオーバーな演技はつつしめとさとす有名なせりふの一節である。…
【キッド】より
…この劇は,悲嘆のあまり半狂乱に陥る主人公の心理描写に加えて,劇中いく度も現れて血の復讐を促す亡霊,誇張された朗誦体で語られる独白,といったローマのセネカの劇作の流れを汲むセンセーショナルな道具立てによって,この後,J.マーストンやC.ターナーらに受け継がれていく流血復讐悲劇の流行の端緒を開いた。シェークスピアの《ハムレット》はこの悲劇に構想の多くを負っていると考えられるが,ことによると,1580年代末に上演されて人気を博し,《ハムレット》の粉本となったとされるいわゆる《原ハムレット》の作者はキッドであるのかもしれない。【笹山 隆】。…
【シェークスピア】より
…とくに中世的民衆文化のカーニバル(祝祭)性は,彼の演劇の基層をなしている。他方,ハムレットに見られるように,極度に洗練された近代的知識人の危機と不安をも,彼は射程にとらえていた。こうした境界性と多義性こそ,彼を現代にとっても興味尽きない作家にしている特質である。…
【髑髏】より
…デューラー,ホルバイン兄弟らが好んでどくろや骸骨を描いたのは15世紀末以降のことである。また,解剖学者ベサリウスの《人体の構造》にある,机上のどくろに触れて黙想する骸骨の絵は,シェークスピアに影響を与えて,ハムレットがどくろを手にして独白する場面の基になったとされる。さらに,《ハムレット》と同じころのS.ターナーの戯曲《復讐者の悲劇》は毒殺された恋人のどくろを使って犯人の公爵に復讐する物語で,死の象徴としてのどくろが主役である。…
【バートン】より
…〈憂鬱(メランコリー)〉とは,当時(ルネサンス末期)の時代病のようなもので,今日の〈ノイローゼ〉や〈心身症〉と似て,日常会話のレベルで話題にされていた。ハムレットの性格造形もこの風潮にもとづいているといわれる。バートンはこの時代病を,中世からルネサンスを通じての常識であった気質論にもとづいて〈解剖〉してみせる。…
【ヘルシンゲア】より
…人口5万7000(1996)。シェークスピアの《ハムレット》の舞台のモデルとなった古城クロンボーで名高い。デンマークは,この城に砲台を備え,1429‐1857年に航行船舶に対し〈海峡税〉を徴収し,当地の繁栄の財源とした。…
【マニエリスム】より
…前者はおもにハウザー,サイファー,ローランドら主として精神分析や社会史に立脚する流派で,その説によると,マニエリスムはローマ劫掠(1527)等の社会危機に対する西欧の知識層の深刻な対応の姿であり,この文化動向は不安,緊張,神経症によって特徴づけられるという。その文学的形象の典型は,知と懐疑において過剰なハムレット,〈狂気の〉ドン・キホーテ等であり,マニエリスムの最高の作家はシェークスピアだとする。彼こそ,定型的人物,たとえば当時流行した憂鬱病者の類型たるハムレットのごとき人物と既存の常套的筋立てを利用しつつ,絶えず誇張と美辞麗句と語呂合せ,悲劇要素と喜劇要素の混交からなる独創的な技巧を駆使して,人生の測りがたさや,人間存在の夢幻性を浮彫にしたからだという。…
【脇役】より
…だが個々の戯曲についてある人物が脇役かどうかを判定することは,必ずしも容易ではない。シェークスピアの作品を例にとると,《ハムレット》においてデンマーク王子ハムレットが主役であり,デンマークの宮廷の兵士たちが端役であることには議論の余地がないが,デンマーク王クローディアスはどうであろうか。彼はハムレットの復讐行為の対象であり,主役と対立する敵役であるから,劇全体において占める位置では確かに主役に劣るが,脇役とは呼べないかもしれない。…
※「葉室家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」