蒼前様(読み)そうぜんさま

改訂新版 世界大百科事典 「蒼前様」の意味・わかりやすい解説

蒼前様 (そうぜんさま)

おもに東日本に分布する馬の守護神で,相染,勝善とも書く。正月あるいは年に数度の厩祭をする場合が多く,厩に蒼前様のお札を貼り,祈禱してもらう。近世期には猿回し専業とする猿太夫と称する者が厩祈禱と守護札の配札にまわっていた。秋田では,旧佐竹北家の厩番に伝えられてきたが,神仏分離以降祈禱師に転じたといわれ,彼らは厩祭だけではなく,獣医の役割や馬に関するいっさいの世話をしていたという。岩手県盛岡市郊外の駒形神社をはじめ,馬の守護神をまつる社寺から蒼前様の札が出されている場合が多い。
厩神
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒼前様」の意味・わかりやすい解説

蒼前様
そうぜんさま

馬の保護神で、勝善、正善、宗善、総善などいろいろにいわれ書かれている。牛馬の守護神というのは全国各地にあるが、蒼前というのは東日本とくに東北地方に多く信仰されている。岩手県の各郡では、月日は土地によって異なるが、蒼前神の祭日にはお供えをあげ、馬をきれいに飾って参詣(さんけい)する。また馬の子が生まれたときは、御神酒(おみき)をあげ近所の人を招いて祝うという。秋田県仙北郡では、正月中に猿丸太夫(さるまるだゆう)という厩(うまや)祭りの祈祷師(きとうし)がきて祈祷をする。蒼前様は、家の中の大黒柱や、居間にあがる敷き板の上方に棚を設けて祀(まつ)ってあるのが多い。

[大藤時彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蒼前様」の意味・わかりやすい解説

蒼前様
そうぜんさま

馬の守護神。勝善様,相染様とも書く。「そうぜん」は,葦毛四白の馬とする説,爪揃神の意とする説がある。おもに東日本にその信仰は分布し,厩のそばにかまどを築き,その上に農具を並べてこの神を祀る長野県東筑摩郡の例,正月に猿丸太夫 (厩祭の祈祷師) が祈祷し,また馬の売買のときにばくろうがこの神に御神酒を供える東北地方の例などがある。さらに東北地方では馬をもつ人たちでつくる講があり,この講を「そうぜん講」と呼ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内の蒼前様の言及

【ウマ(馬)】より

…すなわち馬は神々の乗物という素朴な信仰の表現である。飼馬が倒れると馬頭観音,あるいは蒼前(そうぜん)様(東北地方の馬の守護神)として祭り,またその安全を駒形神社などに祈願する信仰も,古来,馬の飼養が普及していた東日本に顕著な現象であった。したがって,その肉を食べることも古くは忌避されており,明治以後に廃馬を処理する方法の一端として始まって食習となったといえる。…

【厩神】より

…また駒形明神も馬の守護神とされる。このほか東日本では蒼前様(そうぜんさま)をまつることが多く,この神をまつる棚をソウデンダナと称するところもある。このほか鹿児島県曾於郡ではハヤマサマ,中国地方,とくに山口県などではオンバンサマ,長崎県壱岐島ではクサゴエサマと呼ばれる神がそれぞれ馬の守護神とされている。…

※「蒼前様」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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